
ケニア国連大使の世界に向けたスピーチ
2022年2月25日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
昨日(2022年2月24日)、ロシアが遂にウクライナに侵攻しました。
西側諸国の再三にわたる警告にもかかわらずロシアはそれを実行したとして、西側諸国の一部である日本でもそれはとんでもない暴挙としてほとんどのメディアがロシア批判を展開しています。
現代の国際社会において、「力による現状変更」を強行するロシアの行動を批判することは当然のことではあります。
しかし、その少し前に国連の安全保障理事会の緊急会合において行われた一つのスピーチを聞いたことで、それはそう単純な二元論で片付けられない非常に複雑な問題でもあるということを気付かされたのも事実です。
そのスピーチとは、ケニアの国連大使であるキマニ氏が、軍事力を振りかざしてウクライナ東部2地域の「独立」を承認したロシアの行動を、帝国主義によって分断されたアフリカの苦難の歴史をもとに「正当化できない」と明確に非難したスピーチとしてほとんどのメディアで紹介されました。
もちろん、彼のスピーチの基本的な目的はロシアを批判することでしょう。
しかし、私にはそれとともにそれを批判する西側諸国に対する「皮肉」のニュアンスがひしひしと感じられてしまいました。
この約6分間のスピーチを要約翻訳すると以下のようになります。
「この状況は私たちの歴史と重なる。ケニアや、ほとんどのアフリカ諸国は帝国の終焉によって誕生した。私たちの国境は私たちが自分で引いたものではない。ロンドンやパリ、リスボンなど植民地時代のはるか遠くの大都市で引かれたものだ。アフリカは19世紀から、英国やフランス、ポルトガルなどの欧州列強の植民地支配を受け、列強同士が勝手に決めた国境によって『分割』された。今でもアフリカ諸国では国境の向こう側に、歴史的、文化的、言語的に強く結ばれた同胞が暮らしている。もし独立する時に、民族や人種、宗教の同質性に基づく国家を追求していれば、何十年も血にまみれた戦争を続けることになっていただろう。その代わりに、私たちは危険なノスタルジアで過去を振り返り続ける国家をつくるのではなく列強によって引かれた国境を受け入れ、アフリカ大陸の政治的、経済的、法的な統合を目指すことにしたのだ。」
キマニ氏がこの素晴らしいスピーチをほれぼれするような英語(私は彼の英語は我々日本人がノンネイティブ英語の最高峰としてお手本にすべきものだと思います。)で行ったという事実こそが、かつての帝国主義の産物だということを突き付けているように見えるのは私だけでしょうか。
彼は、「私たちアフリカ諸国は、本当は民族や人種、宗教の同質性に基づく国家を追求をしたかったけれど、それを諦めることで不要な戦争を回避したのだ」と言っているのです。
しかも、そもそもの分断は列強が好き勝手やった結果であり、自らの責任は全くないにもかかわらずです。
ロシアを批判する西側諸国はソ連崩壊後、旧ソ連の諸国のNATO加盟を強力に進め、遂にはロシアとは歴史的に兄弟国ともいえるウクライナをもNATOに引き込む状況を作り出してきました。
ロシアから見ればそれは、喉元にミサイルを突き付けられるようなものと言えるのかもしれません。
そして、そのロシアが感じるプレッシャーの強さは、もし隣国であるカナダがロシアと同盟をする姿勢を示したらアメリカはどのような行動をとるかを想像したら分かりやすいかもしれません。
二度の世界大戦による惨状を経験してきた先進国同士がまたもやこのような事態を避けることに失敗するとは、本当の意味で「歴史から学ぶ」ことに関して「学習障害」を抱えていると思わざるを得ません。