チョムスキーから見たウクライナ情勢
2022年4月4日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
このブログではウクライナ情勢に関する話題を何度か取り上げていますが、その中で私は日本において過熱する「ロシア憎し」の報道など、一方的なものの見方に距離を置くよう心がけています。
誤解していただきたくないのは、どんな理由があるにせよ主権国家であるウクライナに対して武力で侵攻したロシアが何よりも責められるべきであるということは私も当然のことだと考えています。
しかし、ではなぜロシアはそのような「蛮行」を行ったのかというその理由を見ようとしないという姿勢を貫くことはあってはならないと思いますし、当事国同士の一方的に相手を責める視点だけでは平和には決してつながらないと考えます。
しかも、日本はNATOの構成国ではなくある意味第三国的立場としてこの問題を考えることができるはずです。
とはいえ、「ロシア憎し」の報道が過熱する今の日本では、ロシア側の事情を積極的に論じる様な記事を見つけることは本当に難しいのですが、先日偶然にも次のような記事を見つけました。
クーリエジャポンの「世界最高の論客が忘れられた超大国の戦争犯罪を告発」という衝撃的な記事です。
ここでの「世界最高の論客」とはこのブログでも何度も取り上げている言語学者であるノーム・チョムスキーのことであり、「超大国」とは彼の母国であるアメリカです。
以下にその記事を要約します。
今回のロシアのウクライナ侵攻は外交的努力を無視した一方的侵略行為であり許されるものではないことが前提であるが、そうであるならばアメリカが今まで行ってきた「コソボ紛争」「イラク侵攻」「リビア侵攻」「シリア空爆」などは、国際法に照らした上での悪質性は今回のロシアよりもよほど高いものだ。
記事の中のチョムスキーの生々しい言葉を引用します。
「コソボ紛争では、交渉の余地は残っていたのに、アメリカはいつものように暴力を優先し、外交的な選択を完全に無視した。アメリカは、ロシアがアメリカとの間で冷戦後のヨーロッパの安全保障のために落としどころを探っていたにもかかわらず、親ロシアのセルビアを空爆し、ロシアの努力をひっくり返した。その後もこのようなアメリカの蛮行は、イラク侵攻、そしてリビア空爆でさらに勢いづき、国連安保理決議に対して拒否権を発動しないというロシア側の同意をとりつけたにもかかわらず、アメリカ(NATO)はあっさり反故にしてロシアの誠意を裏切った。」
これらはアメリカが「主要な市場、エネルギー供給分野、戦略的資源への無制限のアクセスを確保する」といった自国の利益を守るためなら一方的に軍事力を行使する権利」があると考え、国際法を踏みにじっても問題ないという姿勢を常にとる国であることの証拠だ。
凄まじい、アメリカ批判です。
改めて確認しておきますが、これを言っているのはロシアのプーチンではなく、歴とした「アメリカ国民」であり、しかも「世界最高の論客」と呼ばれる大学者チョムスキーです。
しかし、私たちはこのチョムスキーの批判を冷静に受け止めなければなりません。
アメリカ(西側諸国)が100%正義でロシアが100%悪であるという一方的な視点でこの問題を見続けるのであれば、永遠に戦争のない世界は作ることができないと私も思うからです。
今回のウクライナ侵攻に至るまでのことを考えた時、私は自分の子供たちに次のような質問をしました。
もし仮にアメリカの隣国カナダが(民主主義的な手続きによる)政変によって西側で言うNATOのような親ロシアの枠組みに参加するということが決まったとしたら、アメリカはどのような行動に出るだろうか?
間違いなく、アメリカは「その日のうち」にカナダに侵攻するはず。
今回少なくともロシアはウクライナに侵攻する前まで、(ロシアに接していない)ポーランドがNATOに加盟しても侵攻しなかったし、(ロシアと接している)ウクライナがNATOに加盟する意思を表明してから「何年も」加盟しないよう訴え続けてきたのとは対照的に。
冷戦時は西側と東側のパワーがそれなりに拮抗していたから「冷戦」を維持することができました。
しかし、ソ連が崩壊し、世界がアメリカ一強になったとたん、アメリカは自らのイデオロギーと異なるイデオロギーに対する許容性をなくしてしまったように思います。
ロシアだけではありません。中国だって、中東諸国だって、アメリカと異なるイデオロギーで動いているわけで、それに対してアメリカの基準で「善悪」という評価をすることをやめることができなければ、いつまでたっても平和は訪れることはありません。
このチョムスキーの記事は、アメリカ(西側諸国)に謙虚さを強く求めるものであると私は解釈しました。