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一勝九敗

2016年6月5日 CATEGORY - 代表ブログ

一勝九敗

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

ここ数回、ユニクロの柳井正社長の著書を立て続けにご紹介してきましたが、今回は一番古い柳井社長が初めて出版した本をご紹介いたします。

そのタイトルは、もはや柳井社長の代名詞ともいうべき象徴的な言葉、「一勝九敗」です。

柳井社長は、このブログで私が何度もご紹介している尊敬すべき経営学者である一橋大学の楠木建教授が、その口癖である「当然ですけど、当たり前ですけど」を真似するほどに尊敬されている経営者なのですが、本書を読んでその理由が分かったような気がします。

教授は、柳井社長のすごさを「具体と抽象の往復運動の天才」という表現で説明されることが多いのですが、これまでは、その意味がいまいちピンと来ませんでした。

ところが今回、本書の中に以下のような表現を見つけて、腑に落ちた感を得ることができました。以下、少し長くなりますが引用します。

「このように、98年の原宿店オープンにこぎつける前は失敗の連続だった。いずれにせよ、新しい事業はそもそも失敗することが多いのである。やってみないと分からないことが多いからだ。事業計画をきちっと作っても、ほとんどその通りに進まないことの方が多い。しかし、この失敗を生かすも殺すも経営姿勢次第である。失敗は誰にとっても嫌なものだ。しかし、それに蓋をしたら最後、必ず同じ種類の失敗を繰り返すことになる。失敗は単なる傷ではない。失敗には次につながる成功の目が潜んでいるものだ。したがって、修正していけばよい。危機につながるような致命的な失敗は絶対にしてはならないが、実行して失敗するのは、実行もせず、分析ばかりしてグズグズしているよりよほど良い。失敗の経験は身につく学習効果として財産になる。問題は、失敗と判断した時に『すぐに撤退』できるかどうかだ。儲からないと判断したら、その事業を継続すべきでないのは誰にでも理解できるはず。短期間のうちに撤退後の方針を決め、人員の再配置を決める。失敗に学ぶことと、リカバリーのスピード。これが何より大切である。」

楠木教授は、経営はスキルではどうにもならない、再現性のないアートであるとおっしゃいます。

まさに、この柳井社長の言葉は経営の本質を言い当てています。どんな計画を作っても、ほとんどのケースが失敗するわけですから、経営には再現性のかけらもないわけです。

しかし、それでも経営は前に進まなければなりません。つまり、経営は、「こうすればうまくいく」という方法などありえず、「一勝九敗」が当たり前の前提の中、その失敗から学びながら前に進むものであり、唯一コントロールすべきは、再起不能になるレベルの失敗をしないことのみだということです。

それを担保する方法が、「失敗に学ぶことと、リカバリーのスピード」ということになります。

そして、それを繰り返していくということが、「具体と抽象の往復運動」であり、繰り返しの中で自分の中の抽象度をあげることによって、その勝率があがることを我々は「経営のセンス」があると表現することになるのだと理解しました。

まさに「具体と抽象の往復運動」の天才にしか書けない貴重な本だと思います。