不動産激変ーコロナが変えた日本社会
2022年4月7日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
ランゲッジ・ヴィレッジを運営する大芳産業は別事業として不動産賃貸事業も行っていますので、不動産関連の大きな動きがあった場合にはできるだけ積極的に情報を取集するようにしています。
今回のコロナ禍において日本の不動産は今までになく大きな影響を受けました。
全国的な行動制限によって飲食店や物品販売店舗は大打撃を受け、またオフィスもリモートワークの浸透で存在自体が疑問視されるようになった一方で、実店舗を持たないネット通販の大躍進により物流関連不動産の需要が大幅に高まりました。
ただ、そのような状況の中でも、政府による大規模な金融緩和政策によって投資資金が実物資産である不動産に流れたことで、実需が一時的に厳しくなっているオフィスや店舗を含めた不動産全体の価格もそこまで下がっていないというのが実情です。
とは言え、このコロナ禍はコロナの収束までの一時的な落ち込みという変化にとどまることはなく、人々がコロナ禍に慣れてしまったことによって社会の根本的な変化を促進することとなり、日本の不動産には構造的な大変化が起こることが避けられないと予測されています。
そのあたりのことを詳細に解説してくれている「不動産激変」という一冊を読みましたのでご紹介します。
本書を読んだ上で最も印象的だったのが、本書が「不動産」に関する書籍でありながら、その内容は日本の社会における従来の考え方に根底から疑問を呈して、今後収れんしていくべき「あるべき」姿を浮かび上がらせているところです。
今後収れんしていくべき「あるべき」姿とは、日本人一人一人の、またその一人一人が拠点とすべき不動産を含めた経済的インフラの「本質的価値」から目をそらさない生き方と言い換えることもできます。
前述のとおり、このコロナ禍ではリモートワークが浸透しましたが、それによって一人一人の社員は会社に来ない分、純粋な「アウトプット」だけが求められるようになりました。
通勤が求められていた時は、ただ会社に「いる」ことだけでなんとなく仕事をしている「フリ」によってその本質部分が誤魔化されていたということです。
会社は2割の優秀な社員と6割の普通の社員と2割の不要な社員でできているという「2.6.2の法則」が完全に成り立たなくなり、2割の不要な社員は完全に淘汰され、6割の普通の社員の中の半分はプレッシャーを感じることで優秀な社員と化すことになることから、著者は最終的には、2割+3割=5割の優秀な社員だけの筋肉質な会社に自ずとなって行くであろうと言います。
2000年以降の20年余りで日本だけが生産性を落とし続けて、先進国の中で最下位に甘んじてしまったのは、他の先進国がすでにデジタル化のプレッシャー(というか恩恵)によってそのような構造改革を2~30年間続けてきたのに対し、日本がデジタル化を意図的に回避し続けた結果であり、このコロナ禍によって遅ればせながらようやくそれに着手したというのが著者の見方のようです。
私も本当にその通りだと思います。
本題に入りますが、このことは日本人の働き方の変化だけにとどまらず、日本の不動産の変化にも直結していくことになりそうです。
というのも、このようなリモートワークがむしろ生産性に直結することが分かった以上、都心の立派なオフィスの存在はお荷物でしかなくなり、サラリーマンの家選びの基準はこれまでと一変します。
今まで夫婦共働きによって稼ぎ出す資金の大半をつぎ込むだけの価値のあった「大手町から直通40分、駅から徒歩5分」という住宅の基準がさして重要なものではなくなります。
そのため、今までは対象外だった条件も十分に対象の範囲に入り、海が好きな夫婦は海の近くへ、山の好きな夫婦は山の近くへという形で、会社ファーストの家選びから、人それぞれの趣味を反映させた生活ファーストの選択が可能となります。
ここで著者の強烈な本音の部分を本書より引用します。
「私は不動産投資のアドバイザーとして週刊誌などから毎年『値上がりするマンション』といった特集記事にコメントを求められるのですが、(仕事ですからコメントはしつつも)コメントをしながらいつも疑問に思うのが、果たして人は自分が住む家を『値上がりするから』買うのかという根源的な疑問です。これからは、ディベロッパーが繰り出すポエムに惑わされた『みんなが買うから』といった一辺倒の購入スタイルは影を潜めていくと思います。」
日本が20年以上にわたる一人負けともいうべき経済的低迷を克服するには、根源的な「価値」を自らの意思で選択にするという姿勢の変化が必要なのだと思います。