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二枚目の名刺

2015年8月16日 CATEGORY - 代表ブログ

yonekura

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

私は一橋大学の楠木建教授を経営学者として非常に尊敬しており、教授の著作をこのブログで何度も紹介していますが、同じく一橋大学のイノベーション研究センター教授の米倉誠一郎教授についても大変尊敬しています。といっても、米倉教授は楠木教授よりもずっと先輩でして、そのように同列に扱われることを楠木先生は好まないかもしれませんが。

このお二人には、大学一年生の時の教養課程における「経営学入門」的な講義にてお世話になりました。そのころは、まだ楠木先生は助教授でらっしゃって新進気鋭の学者という感じ、一方米倉教授は、ベテランスター教授といった感じでした。

この時、授業の内容はともかく、お二人の「話のうまさ」に驚嘆した記憶があります。圧倒的な知識に裏打ちされたトークだけでなく、時折ちりばめられるセンスのあるジョークなど、知識人のかっこよさというのをはじめて知らされた感じがしました。

本来、教養課程の1年生の講義に登場されるようなお二人ではなかったのでしょうが、少しだけスター教授の授業を受けさせて、「経営学」に興味を持たせようという大学側の配慮だったのかなと思っています。

そんな、米倉教授の最近の著書「二枚目の名刺 未来を変える働き方」を読みました。

本書によって気づかされたのは「本当の豊かさとは何か」ということです。それは、「選択肢の多さ」とのことなのですが、その説明が非常に秀逸でした。

「卑近な例だが、『金持ちになってポケットにいつも100万円を持っている』といっても、毎日最高級フレンチしか食べられないなら、それは全く豊かとはいえない。同じようにお金はあるが毎日ラーメンしか食べられないとしたら、これも全く豊かではない。今日はフレンチ、明日はラーメン、明後日はたこ焼きとコンビニのおにぎりなどなど、、、、この選択肢の多様性こそが、実は豊かさを物語る指標だと思う。」

非常に分かりやすい説明だと思いました。

そしてこの理解を下敷きに、日本人の働き方に関して「選択肢の多さ」をもつことの重要性について考えるというものです。

一般的な日本の学生の進路選択はまさにその正反対だと言えます。すべては、自分のもつ偏差値で入学可能なもっとも高偏差値の学校を選ぶ、そして、それによって入学した大学から入社できるできる限り世間に名の通った会社を選ぶ。その過程において、自らの価値観、得意不得意によってその分野を選択する余地というのは非常に限定されていると言えます。

まさに、「就活(受験)中の彼らの頭の中には、大げさに言うと『何とかして大企業、有名企業(有名大学)に入りたい』という、単純・単一なチョイスしかない」というものです。

このような状況の中にあって、自ら主体性を持ち、自らの価値を最大限に引き出すような活動を行うことによって、結局そのことが本業のパフォーマンスにも影響を及ぼすような働き方を堂々とする人間をいかに作り出していくかというのが、本書の主題です。

このことは、個人の意識改革ももちろん重要ですが、会社ひいては社会の意識改革も必要だと著者は言います。

「兼業はけしからん、帰属意識も薄くなる」というのが一般的な会社の意識かも知れませんが、落ち着いて考えてみれば、自らの価値を最大限に活用するため「二枚目の名刺」を作って毎日外に飛び回っている社員の営業に対する貢献度を評価するという姿勢はいたって合理的なものだと思います。

逆に言えば、単なる趣味の世界に走ってしまう「二枚目の名刺」ホルダーと貢献をしっかりできる「二枚目の名刺」ホルダーをきちんと見分ける能力というものが会社や社会に求められてしかるべきかと思います。

特に、これからの日本は工業化社会から知識創造社会へと脱皮しなければならないわけです。その中で必要とされる人材は、明らかに後者の評価をされることに敏感な人材です。

「このことを真剣に考えないと簡単に淘汰されてしまう」という著者の言葉は、私の意識の奥に深く突き刺さりました。