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AI時代の新しい資本論

2018年9月7日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前々回、前回と「AI時代の新・ベーシックインカム論」について二冊の本をご紹介しながら考えてきました。

その中では、AI時代においてベーシックインカムの必要性について十分な理解ができた一方で、その原資をどうするのかについては、どうしてもその必要性と比べると不十分に感じてしまったというのが正直なところでした。

ただ、それでも、前回ご紹介した「隷属なき道」の中で次のような一文から、かなり明確な方向性が示されていたとも感じられました。

「フォードの社長が、労働組合のリーダーであるウォルター・レアザーを自社の新しいオートメーション工場に案内した時のことだ。社長は冗談めかして尋ねた。『ウォルター、あのロボットたちにどうやって組合費を払わせるつもりだい?』。すかさず、レアザーが応えた。『ヘンリー、あのロボットたちにどうやって車を買わせるつもりだね?』」

このエピソードは、肉体を利用する労働がAIに取って代わられる時代の税は、「労働」からではなく「資本」から上げられるしかないということを見事に示しているように感じました。

そして、本書ではそのことを理論的に主張している経済学者としてあの有名なトマ・ピケティ氏を紹介されていましたが、お恥ずかしながら私は彼の本を買ったまま「積読」状態にしていたことを思い出し、すかさず21世紀の名著と言われる「21世紀の資本」を読んでみることにしました。

本書の中でピケティは、21世紀中に多くの労働者がAIによって仕事を奪われて、ほぼ自動的に物が生産されるような時代になると予想した上で本書を書いているわけではありません。

ですが、18世紀から現代にいたるまでの様々なデータを参照しながら、物の生産における労働と資本の貢献度合いを見るに、資本の割合が徐々に増加している事実を明らかにしています。

つまり、これは労働力よりも資本すなわち、土地や工場など労働力以外の生産要素の重要性が少しずつ高まってきていることを意味します。

そして、それがAIの進展によって、自動的生産が可能な時代になったとしたら、その割合は圧倒的に資本有利となることが良く分かりました。

ピケティが、主張する資本優位の時代の対処方法は、累進的な資本税と超高収入を得る人々の所得への累進課税です。

なぜならば、生産要素としての労働の重要性が低下した世の中では、少ない労働の対価に対して課税することは現実的ではないし、むしろ逆課税としてのベーシックインカムが必要となるというのは、前々回、前回の記事にて紹介済みのとおりだからです。

そのような時代においては、資本の所有は今よりもずっと一部の人に収れんしていきますし、AIの活用をコントロールするような指導力をもった経営者や専門技術者もいまとは比べ物にならない超高収入となりかつ少数となるはずです。

そうなれば、このような時代の税のあり方とすれば、いい悪いの問題を通り越して、ピケティの主張する累進的な資本税と超高収入を得る人々への所得課税にならざるを得ないと思いました。

まさにそれが、ベーシックインカムの原資となり大衆の消費を可能とし、それによって資本家や経営者、専門技術者の超高収入の源となるというわけです。

私は、本書を読んでAI時代を乗り越える方法はまさにピケティが主張する方法しかないということを確信し、本書が21世紀の名著と言われる理由が分かったように思います。

 

 

 

 

 

 

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