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東大8年生

2023年3月4日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

このブログにもう何度も登場している私の古い友人で書籍編集者の苅部達矢氏が新刊を出されたとのこと、さっそくアマゾンで購入し読んでみました。

タイトルは「東大8年生」。

鳥取の田舎の高校から東大に進み、人生に迷い、大学の恩師の助言で自分に素直に生きた結果、メキシコの大学へ国費留学、その後その待遇に窮屈さを感じ、現地の生活にどっぷり浸かるためタコス屋の見習いを経験、日本へ帰国後、今度は何とはなしに目に留まったネイマールのプレー動画に感動したことでブラジルへ飛び、彼の所属チームであるサントスFCの広報としてネイマールの通訳も務める。現在は国際舞台での活躍を目指すサッカー選手らに語学や異文化コミュニケーション等を教える「フットリンガル」事業に取り組む著者タカサカモト氏自身が語った自身の「リアリティショー」的な一冊です。

彼が編集者として出される本はできる限り読ませていただいていますが、今回はいつもの「スポーツ(サッカー)」ネタにプラス、私の担当領域である「語学」ネタが絡まっており、何時にも増して前のめりで読み始めました。

その上で本書の評価ですが、おそらく世間一般とは全く異なるかもしれません(彼はネイマール、ロナウド、そして大谷翔平をはじめとする編集者なら誰でも関わりたい大物の書籍をバンバン担当しています。)が、私の個人としては彼の編集者人生史上最高の一冊だと断言させていただきます。

現代の日本社会はあまりにも硬直的であり、私たちは常に「他人と比べながら生きる」ことを強制されています。しかし、著者はそのような日本社会の中で育ちながらも、大学の恩師との出会いを境に、「自分の時間を生きる」という選択をし、それによって実際に自らの望む人生を手に入れることができています。

私が本書をそのように絶賛するのは、もちろんそのような彼の人生における刺激的な「リアリティショー」自体の面白さもありますが、それ以上に彼の人生を文字通り劇的に変えてしまった「大学の恩師(小松美彦教授)」との出会いに関する記述に負うところが大きいと思っています。

それは著者が実際に体験し著者自身の人生が大きく変わったように、「書籍内の記述」として間接的ではありながらも私自身にそれに近い衝撃を与える力を確かに感じたからです。

以下、その「書籍内の記述」を引用します。

「実は僕が大学入学とともに鳥取から上京して間もないころ、東京という全く新しい環境に適応する上で、主観的な実感における時間の流れの速さの感覚の違いに悩んでいた。あるとき小松先生に『東京と鳥取の時間があまりにも違っていて戸惑っています。正直苦しいです。どうしたらいいでしょうか?』と実に突拍子もない相談をした。それに対して先生はこのイモ学生の言葉足らずの相談を真剣に聞き、自分自身で確かめるようにうなずきながらこうおっしゃった。『苦しめばいいんじゃないかな。苦しむって言っても、君が今苦しいっていうのは、自分の外側を流れてる東京の時間に無理して合わせようとしているからだろう?それは君の中に流れてる鳥取の時間とは異なるわけだから、苦しくなるのは当然だと思うよ。そうじゃなくて、君の内側に流れてる自分の時間を生きればいい。好きな時に好きな本を読み、好きな場所で好きな人と会う。ただし、そうすれば必ず外側を流れる時間とはズレていくから、その狭間で苦しむことになるけれど、そういう苦しみならむしろ、徹底して苦しみぬいたほうがいいと思う。そういう意味で、苦しめばいいんじゃないかな?』」

このように文字にしてしまえば、そこまでの著者の感動は大げさに過ぎるのではないかと思う向きもあるかもしれません。

しかし、これがあくまでも著者の小松教授に対する唐突にした質問への即答であるという状況を考えると、著者の人生を変えるほどの「感動の本質」を理解することができます。

私自身も、著者と同じように海外生活も経験できましたし、いわゆる「就職活動」とは無縁でいままでの人生を送ってきましたので、かなり意識的に「自分の時間を生きる」という選択をしてきたほうだという自負はありましたが、もし私にも著者が経験したこのような直接的な出会いがあったなら、その時その時の選択がもう少しパンチのきいたものになっていただろうに。

私はこのような出会いに恵まれた著者に対するそんな嫉妬心を否定できません。(笑)

2023年6月6日追加

俳優の藤木直人さんと、フリーアナウンサーの高見侑里さんのお二人によるラジオ番組、TOKYO FM「SPORTS BEAT 」に著者がゲスト出演された際の音声はこちらからどうぞ。

 

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