なぜ赤ちゃんの記憶は残らないのか
2023年3月12日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
昨日(2023年3月11日)の読売新聞の「よみうり寸評」のトピックは、東日本大震災から12年という日にだからこそ考えさせられる以下のような内容となっていました。
「人生の出来事を人はいくつぐらいで脳裏に刻み始めるのだろう。岩手県釜石市の高校生グループの活動を読売中高生新聞で知った。『震災の記憶のある最後の世代』と自らを位置づけて教訓を語っている。(中略)大震災から12年、幼かった子供も大人に近い年齢になった。芽生えた『最後の世代』の自覚から、体験の継承に努める姿が東北のそこかしこにある」
高校生グループということで一番若くて15歳ですから、当時は3歳。
私自身思い返してギリギリ思い出せるのが、幼稚園の記憶、でも入園式のことについてはまったく覚えておらず、おそらく4歳ぐらいの記憶が限界だと思います。
でも、考えてみると不思議ですよね。
幼児英語教育の普及材料にも使われるくらいですから、幼ければ幼いほど脳細胞は知識を吸収しやすく、その記憶も長期記憶になりやすいはずのように思えるのに。
そんな疑問が頭に浮かび、すぐさま調べてみましたらこのようなウェブページが見つかりました。
以下、要約します。
「ヒトは誰しも赤ちゃんだったころのことを覚えていません。これを『幼児期健忘』といいます。ある研究で,幼いころの重要な出来事(弟や妹が誕生,祖父母の死亡)について調べたところ,詳しく思い出せたのは3歳以降のことばかりで,それ以前についてはほとんど何も覚えていないことがわかりました。しかし,乳児期にまったく記憶できないわけではありません。これまでの研究で,ヒトの生後3カ月で1週間,4カ月で2週間ほど記憶が保持されていることがわかっています。ではどうして私たちは赤ちゃんのころのことを覚えていないのでしょうか。大きく分けて2つの考えがあります。1つは,乳幼児期の学習は未熟で,記憶をうまく固着できない(記銘の失敗)とする考えです。もう1つは,記憶の貯蔵に必要とされた神経ネットワークが,後に発達したものに飲み込まれて,当時の記憶を思い出せない(検索の失敗)とする考えです。それぞれに合致する結果があり,完全に否定できませんが,これまでのところ,検索の失敗説のほうが支持されているようです。一般的に子どもは1歳半ごろまでに言葉を話し始めます。つまり,1歳半ごろまでに言葉を記憶しているのです。よく考えると当たり前ですが,それでも赤ちゃんのころの記憶がないように感じるのは,『いつ』『どこで』『なにを』したかというエピソード記憶が発達していないからでしょう。『自分自身についての記憶』であるエピソード記憶は発達がとても遅く,4歳ごろに機能するといわれます。このため,幼児期の記憶がないと感じるようです。」
なるほど。
記憶はしているけれども、言葉をしっかり身に着けていない時期は、それぞれの記憶に「いつ」「どこで」「なにを」といった「タグ」がつけられないので、記憶がごちゃごちゃになり、必要に応じて引き出すことができない、つまり「検索の失敗」が起こるということ。
このように考えれば、「幼児教育」について成功例が少ない理由がよく説明でき、日本語との間に特に距離が大きい英語を幼児に教える「幼児英語教育」はなおさら難しいことが良くわかります。
震災から12年、「記憶をギリギリ残せる」くらいの幼児たちが、「芽生えた『最後の世代』の自覚から体験の継承に努める」ことができる青年になるのですから、その年月の重みを感じます。