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経営に万能薬なし

2015年7月12日 CATEGORY - 代表ブログ

楠木教授

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

前回、「道端の経営学」という本を紹介しましたが、この本を読む契機は私のブログに何度も登場してらっしゃる尊敬すべき経営学者の楠木建一橋大学教授が監訳をされているということでした。

しかも、教授が「近年まれに見るクリーンヒット」という言葉で本書の原文を評価されている以上、読まないわけにはいかないと思ったわけです。本書自体の感想については前回書きましたので、今回は教授による巻末の「解説」に関して書こうと思います。

教授は、本書自体の主題と絡めて、経営の本質は「場合によりけり」だと言います。つまり、経営には一般解はなく、特殊解があるのみだと。なぜなら、ビジネスには法則(それがおかれている文脈から独立して適用できる普遍的な因果関係)が存在しえないからです。あくまでも、「場合によりけり」だということです。

だからこそ、「経営者」という仕事の存在の重要性を高め、本来理論を仕事とする「経営学者」という仕事の重要性を低めてしまうのだと思います。(もちろん、教授はここまでは言っていませんが、時折、これに近いことを自虐的におっしゃることがあり、それこそが他の経営学者にない教授の魅力を高めていると思います。)

そのような視点に立った時、経営という仕事の本領とは以下のようになると教授はおっしゃいます。

「それぞれのビジネスがおかれている『固有の文脈』に経営の原理原則なりをどう適用するのかということ」

そして、これまた、教授の言葉ですが、

「経営の本質は『具体』と『抽象』の往復運動」にある」

非常に分かりやすくまとめてくださっています。しかし、同時にどちらも「言うは易し、行うは難し」なわけです。

したがって、優秀な経営者はこの「『具体』と『抽象』の往復運動」を上手にこなせる人であり、優秀な経営学者はこれを上手に説明できる人ということになります。ただし、経営自体の結果は「具体的」に表れてしまう以上、先ほど言ったように、「経営の本質が『場合によりけり』であるということは、「経営者」という仕事の存在の重要性を高め、本来理論を仕事とする「経営学者」という仕事の存在の重要性を低めてしまう」ことにもなりかねず、「経営学者」は他の分野の学者に比べ、本来的に損な役回りなのかもしれません。

しかし、このような損な役回りであることを自覚しながら、時には自虐的に、「『具体』と『抽象』の往復運動」を上手に説明しようと奮闘されている教授は本当に優秀な経営学者なのだろうと思います。

そんな優秀な経営学者がお勧めする優秀な経営学者が三人も集まって書かれた本書「道端の経営学」は面白くべくして面白いはずです。

 

 

 

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