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悪魔の傾聴

2023年1月1日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

世に存在するビジネス本のテーマとして「話し方」についてのものはもう十分にあふれる一方で、「聞き方」についてはそれほど多くはないと思います。

ですが、世の中のビジネスマンにとってどちらをより強く必要とするかと考えたときに、少なくとも出版された冊数の差ほど「話し方」に偏るものではないというのが率直な感想です。

というよりも、正直に話せば私自身、家では女房に「聞き方」リテラシーの低さをこれでもかというくらいに指摘され続けてきたこともあり、2023年の元旦に本書「悪魔の傾聴」を手に取ることとなりました。

本書の著者である中村淳彦氏はノンフィクションライターとして今まで多くの社会から取り残されて苦しむ人々へのインタビューによる取材を続けてきた人です。

著者がノンフィクションライターとしてずっと向き合ってきた社会から取り残された人々は、社会に対する不信や不安から心の中に閉じ込もりがちである一方で、実は彼ら彼女らこそ、心の奥底ではその苦しみを誰かに伝えたいという欲求を持っていると著者は言います。

本書のタイトルにある「悪魔の傾聴」とは、彼がそのキャリアの中で培った「相手から本音を聞き切ることで相手の問題や疑問、現状の答えを相手から導き出す技法」ということになります。

まず本書では、「悪魔の傾聴」を成立させるために絶対に欠かせないこととして以下の三つをタブーとすることを挙げています。

「否定すること」「比較すること」「自分のことを話すこと」

しかし、私としてはここで本書への抵抗感をかなり感じてしまいました。

というのも、お笑いにしろビジネスにしろ、まずは何でも「自分の話」に興味を持ってもらうことから始まるわけで、私自身自らのビジネスを相手に理解してもらうことで今まで生きてきたという自負があったからです。

ところが、本書を読み進めると、私は「手段」と「目的」を混同してしまっていることに気づかされました。

つまり、著者の本書における「悪魔の傾聴」の議論は、何らかの「目的」を達成するために必要となる情報を相手から引き出すためのあくまでも「手段」の議論だということです。

目的達成のためにはその前提となる「情報」が正確なものでなければなりません。そして、その正確な情報は何よりも話し手の「本音」から抽出されるべきものです。

であるならば、その目的が何であろうとまずは、その本音を引き出すことが何よりも優先されるべきだということになります。

その上で、著者は「悪魔の傾聴」によって得た情報を使って達成すべき「目的」の種類を以下のように例示しています。

① 著者のようなライターだったら正確な記事にすること。

② ビジネスマンだったら的確な相手のニーズを把握すること。

③ 家族や恋人だったら相手の生活の立て直しをすること。

④ ソーシャルワーカーだったら虐待などの問題解決をすること。

⑤ 医師だったら最適な治療に着手すること。

このように提示されて初めて、私のコミュニケーションのスタンスが「否定すること」「比較すること」「自分のことを話すこと」の三つを「手段」か「目的」の区別にかかわらず多用してしまっていた事実を確認することになりました。

いまなら、女房の指摘を少しは受け入れることができるような気もしないでもありません。

 

 

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