代表ブログ

経営は編集力(後編)

2014年5月28日 CATEGORY - 代表ブログ

Lifehacker_201311_131113book_to_read

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

前回、ビジネスに最も求められている力として「キュレーション」力を紹介しました。そして、その源はどうやら「教養」にありそうだというところまで書きました。

この教養、つまり、文系力で圧倒的な成果を輩出している人として前回紹介の本、「石ころをダイヤに変える『キュレーション力』」が紹介していたのが、セブンアンドアイホールディングズの鈴木敏文会長です。

そして、業界、会社、学校、家族などあらゆる人間関係から生じる慣習なり、仕組みなりに制約されない見識、つまりキュレーション力を思いっきり見せつけてくれるのが、鈴木会長の著書「売る力」です。

鈴木会長は日本一の流通業のトップでありながら、転職組で実際には流通の現場の経験がないといいます。その中で、彼が今までトップであり続けて、圧倒的な成果をあげられた理由が、「お客様の立場」で考えるという視点です。「お客様のために」ではありません。なぜなら、「お客様のために」ではまだその主体が売り手であり、あくまで「売り手の立場」で考えることだからです。

この「お客様の立場」で考える視点こそが、文系力のなせる業です。鈴木会長が「お客様の立場」で考えることでやってのけた文系力が理系力を圧倒したエピソードとしてPOSシステムの活用の話があります。

ダウンロード

 

 

 

 

 

セブンイレブンがPOSシステム、すなわち各店舗でバーコードなどを読み取ることで本部がリアルタイムに何が売れているのかということを把握できる仕組みは有名ですが、実はこのシステムはアメリカで開発されたものです。しかも、本家のアメリカにおいてはずっと「レジ打ち間違い防止」や「店員の間違いや不正の防止」のために使われていました。

このシステムに出会った鈴木会長はもちろん、理系ではないため、システムの詳しいことなどは分かるはずもありません。しかし、彼は本家のように「レジ打ち間違い防止」や「店員の間違いや不正の防止」のためだけにこのシステムを使うのはもったいないとして、その可能性を「商品発注」や「商品管理」のために活用する発想をしたのです。

本家アメリカでのPOSの利用方法はあくまで「売り手の立場」からの発想です。それに対して、彼の発想は「品切れをなくす」「季節感を出す」など完全に「お客様の立場」からの発想なのです。

しかも、理系的にはシステムの中身は同じようなレベルにすぎませんが、使用方法の変更という文系人としての発想によってお客様への利便性、ひいては企業収益に対するインパクトは圧倒的です。

ただし、鈴木会長は以下のように釘を刺されています。

『POSに使用方法を「商品発注」や「商品管理」に変えることによって、死に筋排除による効率化を達成することができるようになりますが、それは新しい何かを創造したわけではない。』と。

すなわち、POSから得られるデータはあくまで「過去」のデータであって、「未来」の価値ではないということです。そして、鈴木会長はここでもっとも大切なのは、「未来」の価値をどのように創造していくかということだと断言されています。

具体的には、POSから得られる「過去」のデータから小さな変化に気づき、「仮説」を立て、アクションを起こしてその結果を「検証」する。そして、そのプロセスを繰り返すことです。

数あるコンビニエンスストアチェーンの中で圧倒的な収益力(一日平均店舗売上で2位に12万円の差)はこのような愚直なプロセスが基礎にあるのだと改めて感じた次第です。

しかしながら、「お客様の立場」立った上でこのプロセスを愚直に繰り返していく中では必ず、売り手である自分たちにとっては不都合なことが生じます。この問題にどう会社として対応していくかを明らかにしなければ、「キレイごと」で終わってしまいます。

私は、鈴木会長の施策のほとんどが社内外での反対を押し切って実行されたという事実から、その行動の背景にある「理屈」は以下のようなものであるということを社内に対し、身を挺して訴えてこられたということではないかと思います。

「真の競争相手は同業他社ではなく変化する顧客ニーズである」と考えれば、目先のコスト意識にとらわれず、その一見不都合に見えるコストがコストではなく前向きな「投資」として捉えることで対処できる。

「キレイごとをキレイごとで終わらせない」ための「キュレーション」力を思う存分発揮させるためにはこのような理屈としての「信念」があってこそだということのようです。

「お客様の立場」という切り口で、ビジネスをキュレートし続ける。このことの重要性をしっかりと胸に刻みたいと思います。

 

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆