経高政低の極み
2016年7月27日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先日、「ソフトバンク、英半導体大手のARMを約3兆3000億円(240億ポンド)で買収」というびっくりするようなニュースが飛び込んできました。
ARMは、スマートフォンの頭脳のプロセッサ(AP)などを手掛ける企業で、インテルのように自前ではチップを製造せず、設計に特化しているのが特徴で、アップルやサムスン、クアルコムといったメーカーにプロセッサの設計を渡し、そのデザイン料で収益を得ています。
実際に物を作っていないため、売上高は去年の数値で1791億円にとどまっています。超高利益率企業とは言え、その企業を約3兆3000億円で買収するというのですから、日本だけでなく世界が度肝を抜かれました。
なぜこんな買収をソフトバンクは行うのか。
孫正義社長は、「スマートフォンをはじめ、多くのモバイル製品がARM社設計のチップを採用しており、世界中のモバイル製品の85%がARM社によって設計されたチップを搭載しているため、今後、IoTが進んでいくと、この企業は10倍100倍規模で成長するはず」という見通しを示し、この投資は「ソフトバンクの長期的ビジョンに完全に合致する投資」だと述べています。
つい何週間か前、「ソフトバンクがアリババやガンホーの株を大量に売却する」というニュースの解説として、ほとんどのマスコミが「ソフトバンクの米国スプリント社の経営がうまくいっていないため、その穴埋めのために大量の現金が必要となった」との見方を披露していましたが、その舌の根が乾かぬうちにこのような事実がニュースとして出てしまったというわけです。
つまり、アウトサイダーにすぎないエコノミストやジャーナリストが、ありきたりの情報を基にして分析できてしまうような内容・レベルの経営をするのであれば、「世に事をなすこと」にはならないということです。
自分の会社の経営に、真剣に取り組み、毎日そのことばかりを考え抜く。そして、その中で導き出した結論を体を張って実行するということを常に実践しているのが孫正義という人です。
出る杭は、出過ぎてしまえば、叩かれない。いや、叩かれても叩いている人が恥ずかしくなってしまう。そのお手本のような出来事のような気がします。
それに対して、政治の方はどうでしょうか。
「人材がいない」にもほどがある。
いや、人材のせいにしてはいけないのかもしれません。有権者の姿勢がそのまま、政治に関わろうとする人のレベルに反映してしまっていると思わないといけないような気がします。
民主主義は、誰もが一票を持ったうえでの多数決です。たくさん納税している人も、あまりしていない人も、政治についての情報をたくさん集めている人も、無関心な人も、すべて平等に一票です。
それに対して、資本主義における株式の仕組みは、投入したお金に比例した多数決です。お金を投入するということは、覚悟も情報も当然に同時に投入しているということですから、投入していない人に対してその判断のレベルは相対的に高くなるのは当たり前です。
結果、お金に比例した多数決で決められるリーダーのレベルは、当然のことながら、自動的にある程度担保されることになります。
つまり、民主主義は、平等を重視することで、そこで決められる事柄の「精緻性」がどうしても弱められてしまう性質があり、資本主義は、投入できるお金の多寡という参加へのハードルが存在するから、「平等性」が削られる反面、参加者がその分真剣になり、相対的に「精緻性」が担保されるということでもあります。
もちろん、「平等性」が重視される政治の世界に経済の仕組みを導入することなどありえないことですが、ここまで「人材不足」とみられる現象が続いてしまうと、どうにかして、有権者全体の判断の基礎を担保する方法を考えないといけない気がしてなりません。
政治の世界が「人材不足」なら、単純に孫正義社長のような経済界の優秀な人材に政治の世界に入ってもらえばいいではないかなどという話しではないことがはっきりしてくるのと同時に、その解決には程遠いという現実に残念ながら気が付いてしまいました。
そんな中で、東京都知事選挙がもうすぐやってきます。