老人支配国家日本の危機
2022年6月12日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回の「コロナショックと昭和おじさん社会」に引き続き、この「昭和おじさん社会」の問題について考えてみたいと思い、もう一冊読んでみました。
そのタイトルは、「老人支配国家日本の危機」という「昭和おじさん~」に負けず劣らず耳障りの悪いものではありますが、今回本書の内容について考えてみたいと思います。
一般に、経済学者が主張する経済の未来予測のほとんどは当たることがないと言われています。
実際、1929年の「世界大恐慌」も、2008年の「リーマンショック」も誰一人言い当てることはできませんでした。
一方で、人口の未来予測はそれとは対照的に、どんな時代でもほぼ確実に言い当てることができ、人口動態を前提とした「予想」も的確である可能性は高くなると言われています。
そのことを見事に実証しているのが本書の著者であるフランスの人口学者エマニュエル・トッド氏です。
実際に、彼は人口動態を軸として人類史を捉え、「ソ連の崩壊」「英国のEU離脱」「米国のトランプ大統領誕生」を予言したことで有名です。
しかも、注目すべきは現代の知識人の多くが肯定する「共通価値」であるグローバリズムに真っ向から相反する「英国のEU離脱」「米国のトランプ大統領誕生」というような事象を「予言」しただけではなく「歓迎」しているという点です。
また著者は、このコロナ禍における母国フランスを含む世界各国の対応についても非常に手厳しい評価をしています。
多くの国は、この未知のウィルスを恐れるがあまり、過剰な防御対策を展開しました。
当初ほとんどの国が、高リスク層である「高齢者」を守るために、あらゆる層の生活を犠牲にするという対応をとりました。
もちろん、このウィルスの特性についてよく分かっていなかったわけですから初期においてそのような対策をとらざるを得なかったことについて著者も理解を示していますが、一方で情報開示に関わる恣意的な対応、また、世代間の不公平な犠牲の強い方がいつまでも続いたことを大いに批判しています。
しかも、この「世代間の不公平な犠牲の強(し)い方」が最も顕著な国の一つが日本です。
なによりも、世界のどの国よりもこのウィルスによる被害は少なかったにもかかわらず、その何十倍もの犠牲者を出した欧米諸国がその不公平をとっくに是正し始めているのに、リスクの低い若い世代の経済活動の抑圧や生徒児童たちの教育機会のはく奪につながる方針はいまだに改善されていません。
こうした状況を著者は「老人支配国家日本」と表現しているのですが、この状況が続く限り、絶対に日本の「少子高齢化」は改善されないと断言しています。
著者が予言し、そして現実化した「英国のEU離脱」「米国のトランプ大統領誕生」は行き過ぎたグローバル化に対するカウンターパンチであるわけですが、グローバル化から切り離されてもその国の豊かさを一定以上に維持するためには何よりも「内需」の拡大が不可欠です。
それを実現する方法は、「多産」か「移民」しかありません。
「世代間の不公平な犠牲の強(し)い方」が今のままでは「多産」はあり得ません。また、今のような「島国根性」丸出しの排他的な国民性では「移民」による人口増加もあり得ません。
この絶望的な状況に直面している私たち日本人は、「人口減少は日本にとって最大にして唯一の課題です。」という著者の指摘を文字通りに受け止める必要があります。