考える力のテストの難しさ
2015年12月25日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。 以前の記事 にて、「大学入試センター試験は廃止され2020年「大学入学希望者学力評価テスト」に移行するという決定」に少し触れました。 そして、先日(12/23)の新聞にてその新試験の記述式問題例が公表されました。 冒頭の写真が、英語の例、次の写真が数学の例です。 これらについての識者の評価として、日経新聞にはZ会の指導室長の橋野氏の以下の言葉があげられていましたが、私としても同感でした。 「思考力や判断力、表現力を問いたいという出題者の思いが伝わってくる問題のイメージだ。教わった知識を使って処理すれば済む問題ではなく、自分が学んできたことの何を用いて解決すべきかを考えさせる問題になっている。」
英語の試験について、まさしく「これができれば英語を使って仕事ができる」類の問題で非常に理想的だと思いました。 数学の試験についても、同様の評価をしました。 また、私個人としてはこのスーパームーンについて、小さいころから純粋に疑問を持っていました。
お恥ずかしながら、私自身はこれを目の錯覚だろうと思っていたのですが、実際の距離の違いであることをこの問題で知り、う~んとうなってしまったくらいです。 ところが、読み進めていくと、あまりに「いい問題」過ぎて違和感を覚えてきました。というのも、このような「いい問題」は、いい教育があってはじめて「いい問題」たりうるわけであって、現時点でこのような問題にどれだけの学生が、対処し得るかということを考えると、ほとんどの答案用紙が白紙になってしまうのではないかという危惧をいたしました。 これらの問題に対処するには、批判の多い現在のセンター試験レベルの問題がパーフェクトにできて初めて可能となると思われるからです。つまり、思考力や判断力、表現力を発揮するためには、道具としての知識があってはじめて可能となるからです。
ですから、この問題は、センター試験を廃止して、これらの問題に置き換えれば解決するというものではなく、センター試験のような知識を問う試験をコンパクトにまとめたうえで、これらのような問題を追加するという方法でなければならないのではないかということです。 これは、TOEICテストと私たちが主宰するSEACTテストの関係に似ているように感じました。
私たちはTOEICテストの存在を否定していません。ただ、TOEICのみでは「使える英語力」の評価テストとしては不十分だと主張しているだけです。そもそも、試験の性質上、とてもTOEICにとって代わるべく膨大な数の受験生を処理することができるようにできていません。 この日経新聞の記事にも先出の橋野氏の言葉として以下のような評が書かれていましたが、まさにごもっともだと思います。
「スーパームーンの観測と三角比を関連づける問題だが、こうした問題が微分・積分や指数、対数などでも作れるのか?問題のバリエーションにも限りがありそうで、何年か続くと似たような問題が相次ぎ、入試対策が進むと思考力を問うどころではなくなるかもしれない。全体を通して気になるのは採点である。膨大な全国共通テストの受験者の答案をぶれなく迅速に採点するのは極めて難しい。」
まだ、当分、日本のテスト事情は迷走が続くことが予想されると思いました。