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ただでお金をもらっても人間は堕落しない

2018年9月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回の記事にて「AI時代の新・ベーシックインカム論」を紹介し、AI時代には国民全員に一律にお金を配る仕組みであるベーシックインカム(BI)が必要不可欠になる、また逆にAI時代だからこそ、それが可能にもなるという話をしました。

そこで必ずと言っていいほど問題になるのは、「ただでお金を配ると怠け者が続出して社会が成り立たなくなる」と考える人が多く、BI導入の足かせになってしまうということです。

本の中で、その点について詳しく論じている名著であるとして絶賛されていたオランダの若き天才歴史家であり、ジャーナリストであるルトガー・ブレグマン氏の「隷属なき道」を読みました。

本書では、この考えを否定するための証拠となり得る今まで世界中で行われた「実験」の結果を紹介し、BI導入が理想的な政策であることを論理的に説明しています。

それはすなわち「ただでお金を配っても、多くの人間は怠け者にならず、むしろ成長し社会が進展する」ことを明らかにすることなのですが、それを明らかにするために理解しておかなければならない前提として、「貧困」はなぜ起こり、繰り返されるのかという命題についての指摘が非常に印象的でしたのでその部分について以下に引用します。

「欠乏は人間の気持ちを差し迫った不足に集中させてしまう。たとえば五分後に始まる打合せ、翌日に迫った支払などだ。そうなると、長期的な視野は完全に失われる。他にも等しく重要なことがあるのに、そちらに気持ちを向けられなくなるのだ。貧しい人が愚かな判断をしてしまうのは、彼らが愚かだからではない。愚かな判断に追い込まれる環境で暮らしているからだ。」

だから、ただお金を直接分配することは、人間の気持ちを差し迫った不足から解放させ、長期的な視野を確保させてあげることにつながるということです。

このように、貧困から脱出させる政策としては、様々頭を悩ませてコストをかけて福祉政策を展開するよりも、ただお金を配ることの方がよほど効果が高いことを明らかにしています。

その点について、以下のような非常に興味深い研究結果があります。

「五人に一人以上の子供が貧しい暮らしの中で育つアメリカでは、すでにいくつもの研究が貧困の撲滅が実際に経費削減の手段になることを示している。カリフォルニア大学のグレッグ・ダンカン教授は、一つのアメリカ人家庭を貧困から脱出させるためには、平均で年間4500ドルかかると算出した。そして、この投資は子供一人当たりに以下の成果をもたらす。

勉強時間の増加:12.5%

福祉費用の節約:年間3000ドル

生涯賃金の増加:5万ドルから10万ドル

州の税収の増加:1万ドルから2万ドル

ダンカン教授は貧困の撲滅は『貧しい子供が中年になるまでに採算がとれる。』という結論を出した。」

このようなことから、貧困を撲滅するために最も効果的なことは、どんな工夫を伴った福祉政策よりも「ただでお金を配ること」であるというのが、著者の結論です。

そして、それは決して、そのお金を受け取る人間を堕落させないという主張を伴います。

つまり、この議論は玉子(貧困)が先か鶏(愚かさ)が先かの類ではなく、明らかに玉子(貧困)が先であるという結論に行きつくため、まずはそれをお金で解決することが最も合理的だとするものです。

ただし、それは何物も持っていないことを証明しなければ、配られない「生活保護」のようなお金ではなく、そのお金があくまでも現在の「欠乏」を取り除いて、より長期的な幸せを得られることにつながる、「条件なし」のお金でなければならないということも付け加えなければなりません。

後は、私たちの心の奥底に深く打ち込まれ、道徳的だと信じ切っている「働かざる者食うべからず」という言葉から自分たちを一旦切り離すことが必要のようです。

それはまさに、かつて「女性の参政権を認めるべきではない」とか「黒人と白人は平等ではない」と思われていたことが現在は到底あってはならないことと信じられているようにです。

BI導入を強く推している「AI時代の新・ベーシックインカム論」の著者が本書を絶賛する意味がよく分かる非常に納得感のある内容でした。