代表ブログ

それは私が外国人だから?

2024年6月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

「入管」という場所は、ほとんどの日本人には縁遠い場所だと思うのですが、私たちランゲッジ・ヴィレッジの日本人スタッフは、外国人講師のビザの関係で彼らに付き添って訪れる機会が結構頻繁にあります。

(ここで「入管」と書きましたが、もともと「入管」と呼ばれる組織は、1947年に外務省の管理局の「入国管理部」として発足し、1952年に法務省の内部部局へ移行して「入国管理局」となり、2019年に法務省の外局としての「出入国在留管理庁」となり現在に至っています。)

最近ではだいぶ改善はされてきましたが、私がランゲッジ・ヴィレッジを始めたばかりのころ(20年くらい前)は、毎回外国人に対する入管スタッフの態度や口調があまりにもひどく、行くのが憂鬱になるくらいでした。

内容を聞いていると(あまりにも待ち時間が長かったので様々な会話があまり意識していなくとも聞こえてきたものです。)、確かにスタッフさんの仕事もストレスフルなものであることは十分に理解できるのですが、それでも日本人相手のサービス業では絶対にありえないような対応も散見されていたので、それでよいかといったら絶対に良くないことだと思っていました。

(あまりに見かねて、2∼3度注意したことがあるくらいです。)

そんな中で最近偶然目にしたのがTBSのサンデーモーニングのコメンテーターとしておなじみのフォトジャーナリストでNPO法人「Dialog for People」の安田菜津紀 副代表による日本の入管で起こっていることを「子供にも理解できるよう」に書かれた「それはわたしが外国人だから?」で、さっそく読んでみました。

「最近ではだいぶ改善はされてきました」というのが、入管の窓口の職員さんに接することでの実感ではありますが、2023年6月にその制度としての外国人に関連する法律が次のように変わるように国会で決められたということを本書で知りました。

「外国人を『生活する人』としてよりも、ますます『管理』『監視』する対象にしていこう」

正確には、2023年の「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」の改正は、そもそも2021年に提出された法案が廃案となった(スリランカ出身のシュマ・サンダマリさんが入管施設で亡くなったことが影響したと思われる)ものが、本国への強制送還に関するものや送還を妨害した場合の刑事罰など、いくつかの点が変更・追加された上で再度提出され、2023年6月に可決されたものです。しかしこの改正案は、本来保護すべき人を本国へ送還してしまう可能性があるとして、さまざまな方面から反対意見があがっているようです。

本書は、入管の窓口だけでは分からない、その奥で苦悩する外国人の人々の生の声を集めたものです。

実際に読んでみて気づいたことですが、前述した通り「子供にも理解できるよう」に、漢字にはルビがふられ、表現も非常に平易な文体で書かれているのですが、それがなぜか取材対象者の皆さんの心の叫びが生々しく直に伝わってくるのです。

いや、それはもしかしたら「だからこそ」なのかもしれません。

本書の謝辞で著者は「子供向けの本をつくりたかった」と書かれてはいますが、決して「子供(だけに)向け」て書かれたものではないのだと思います。

私たち大人にも生々しく直に伝わるように、そして同じような苦しみを共有する外国人にも分かるように、つまりは「多様性」を重視した結果このような文体になっているのではないかと(勝手に)思い至ったのです。

同時に、昨今私たち日本人も「多様性」という言葉を頻繁に口にするようにはなりましたが、この言葉の意味を本当に理解して口にしているのか、今一度見つめ直す必要があるのではないかと反省しています。

最後に、なぜ日本の入管が他の先進国と比べてこのような悲惨な状況を外国人に強いてしまっているのか、その根本的な原因について著者が述べている部分が非常に説得的でしたので以下要約引用します。

「それは『入国管理』と『難民の保護』という二つの仕事をどちらも入管が独自に行っているからです。前者は日本に出入国する人々や滞在する人を把握して管理することで『国の安全を守る』のだと言います。ところがその入管が、迫害や紛争などから逃れてきた人たちを保護し、難民として認定する仕事も同時に担っているのです。例えば入管は『国の安全を守る』目的を達成するために、日本で法律を犯した人を『国籍国に帰国させる』ことがあります。その決定と、『保護が必要な人かどうか』の認定は、役割も、求められる知識も本来違うはずです。」

この、まるで検察官と弁護士の役割を一人の人間がやっているような「一人芝居」みたいな状況を一日でも早く解消して、合理的かつ血の通った入国管理行政を行える国になってほしいと思います。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆