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台湾問題の本質を英語で考える

2025年11月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2025年11月7日の衆院予算委員会で高市早苗総理大臣は立憲民主党の岡田克也議員の「台湾をめぐってどのような状況が日本にとって『存立危機事態』にあたるのかとの質問に対して、

「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えたことが、中国政府を刺激して大きな問題になっています。

このことが大きな問題になっているのは、「存立危機事態」という用語が日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が日本の存立を脅かす事態を指し、そうした状況になった場合に自衛隊が出動できる、すなわち戦争を始めることができると日本政府が考えていると日本の総理大臣が発言したと中国が受け取ったからです。

そもそも、1972年に田中角栄首相と周恩来首相が「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」に署名したことによって、日本は中国を代表する唯一の国家として「中華人民共和国」を承認し、それまで中国を代表すると認めていた台湾(中華民国政府)を国家として認めないとしたと一般に理解されています。

ですから、中国としては日本がこの台湾問題に口を出すことは、「内政干渉」であり、なおかつ「存立危機事態」という「日本と密接な関係にある国」に対する武力攻撃があったことを表す用語を、「国」としてすら認めていない台湾に関して使い、それを前提として中国に対して戦争をする覚悟があると捉えているという受け取り方をしているということです。

この点について私がどうこう言う立場でもなく、またその知識もないわけですが、1972年に田中角栄首相と周恩来首相が署名した「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」の中身のニュアンスに関して、英語の表現を利用して解説している東洋経済の記事を見つけましたのでご紹介します。

「1972年の『日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明』で実際に何が約束されてきたのか。中国が避けようとする『一つの中国』に関する部分的合意とは何か。歴史的経緯を振り返りながら確認したい。共同声明の中で『内政干渉』か否かを判断するうえで重要なのは、次の2点だ。

第2項:日本国政府は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認する
 
第3項:中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する
 
第2項の『承認する(recognize)』は法的な『政治承認』を意味する。問題は後者である。中国は『台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する(reiterate:繰り返し述べて強調する)』とする。それに対して日本は『この中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し(fully understands and respects)、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する』としている。ここから客観的に読み取れるのは、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」というのはあくまで中国側の主張であって、日本はそれを『承認(recognize)』しているわけではないということだ。日本は、中国がそのように表明している事情を『十分理解』し、その意見を『尊重する』と述べることで、相手のメンツには一定の配慮を示しつつも『賛同はしない』、しかし『議論の余地は残す』という外交の妙味を持たせている。ちなみに、日本の外務省のサイトにはこの日中共同声明の英語版が補足的に掲載されているが、そこを見てみると日本側のニュアンスがより明確になる。『respect』は日本語だとあっさり『尊重する』と訳され、ポジティブな賛同の意味に誤解されがちだが、実際にはagree(合意、賛同)やsupport(支持)より弱い表現であり、『否定はしないが、賛同もしない』、『相手の立場を踏まえているが距離をとる』というニュアンスを含む。」
 
この記事を読んで、日本語を英語に変えて考えることのメリットをかなり実感しました。
 
例えば、
 
「『respect』は日本語だとあっさり『尊重する』と訳され、ポジティブな賛同の意味に誤解されがちだが、実際にはagree(合意、賛同)やsupport(支持)より弱い表現」
 
のくだりについてですが、私たちが普段使いの日本語では、「賛同」と「支持」と「尊重」という意味の別を明確に把握することは困難なのに対して、余所行きの言語である英語では、agree>support>respectという意味の強さの違いを逆に把握しやすくなるというのはなるほどなと思いました。
 
ただ、そうではあっても、
 
「ここから客観的に読み取れるのは、『台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部』というのはあくまで中国側の主張であって、日本はそれを『承認(recognize)』しているわけではないということだ。日本は、中国がそのように表明している事情を『十分理解』し、その意見を『尊重する』と述べることで、相手のメンツには一定の配慮を示しつつも『賛同はしない』、しかし『議論の余地は残す』という外交の妙味を持たせている。」
 
という判断の説得力はそれほど大きなものだろうかと思ってしまいました。
 
というのも、agree>support>respectということではあっても、「賛同はしない」という断定的なことでもないからです(だからこその曖昧戦略)。
 
そして、「議論の余地は残す」という妙味の先に、今回のような中国の側の受け取り方が存在し、実際にそれが問題となっているわけですから。
 
やはり、外交において将来に「議論の余地は残す」ということは大きな利息を将来にかけて支払い続ける(しかも複利で)ことになるわけで、このような曖昧戦略は本当に「外交の妙味」と言えるのか、私は疑問に感じています。
 
 

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