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英語の帝国 #195
2018年10月5日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【著者】 平田 雅博
【出版社】 講談社選書メチエ
【価格】 ¥1,700+ 税
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英語が、ブリテン島及びアイルランド島において英語以外の言語(ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語)を制圧するところから、最終的に英語を世界共通語として使用する日本などの国にもその影響をおよぼす世界言語となるまでの流れを詳述する内容です。
ここで明らかになるのは、土着語を英語に置き換えるためには、暴力や法律などの「強制的」な手段よりも、土着の人々に英語を学ぶことで得られるメリットを認識させることの方が圧倒的にうまく機能したということです。
このことについては、ブリテン島及びアイルランド島でもそうでしたし、インドなど本拠地から遠く離れた場所においても例外なくそのような傾向だったことが明らかにされています。
「英語を学べば出世できる」、「英語を学ぶことで裕福になれる」というような実利的モチベーションが、土着の人々の母国語に対するロイヤリティーをはるかにしのぐことで加速度的にその置き換えが進んでいきました。
翻って、今の日本における小さいころから英語を身に付けさせるために日本語も分からない子を英会話教室に通わせる親の姿は、多くの土着の言葉が英語に置き換えられたプロセスに見事に重なるように思えます。
でもその決断は、日本語を捨てて英語を身に付けることによって得られるメリットが、母国語を捨てることで生じるデメリットを確実に超えることを確認した上でなされなければならないことです。
しかも、それは後には絶対に戻れないことを覚悟した上でなされなければなりません。
私には、現時点においてそのような親御さんがその覚悟をされた上でその行動をしているとは思えないのです。
文責:代表 秋山昌広