「なんで英語やるの?」の戦後史 #188
2018年7月13日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【著者】 寺沢 拓敬
【出版社】 研究社
【価格】 ¥2,800 + 税
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#126で紹介した「『日本人と英語』の社会学」の著者の博士論文を大幅にアレンジした処女作です。
教育、特に語学教育においては、政策が「データ」とか「エビデンス」と言われるものを前提に決定されるのではなく、声が大きい人間の「思いつき」によって決められ、実行されてしまうことが非常に目立つ分野であることは前回指摘した通りです。
そのような分野の中でも、著者はそれに勇敢にも立ち向かう姿勢を隠しません。
#126ももちろんそうですが、処女作である本書、すなわち博士論文においても、明確な合理性もない中で実行されている政策に対して疑問を抱き、その「謎解き」をはかろうとする姿勢を貫くその勇気には、心から感心させられました。
本書の「謎解き」の主題は「なんで全員が英語をやるようになったの?」です。
考えてみれば、このグローバル化が進んだ現代でも、9割の人が日本語ですべてが済んでしまい英語の必要性を感じることのない日本において、「全員が英語をやる」という政策はあまりに極端で費用対効果を考えると非常に乱暴な政策であることは間違いありません。
丁寧に「データ」を示しながら謎を解いていく内容は非常に読みごたえがあります。
文責:代表 秋山昌広