英語学とは何か #136
2016年1月15日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【著者】 中島文雄
【出版社】 講談社学術文庫
【価格】 ¥720 + 税
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#135の「英文法を知ってますか」の中で著者の渡部氏が若い文系の学者として悩んでいた時、本書を読んでその悩みから解放されたということで、強く推薦していたので読んでみることにしました。
実際、本書を開いてみると、冒頭20Pにも及んでその渡部氏による寄稿が収録されているという力の入れようでした。 しかし、内容は非常に難解を極めていて、私はとても渡部氏のように、悩みから解放されるどころの話ではありませんでした。(笑)
ただ、その難しすぎる議論の中で、なんとなく学問における「言語」の位置づけが分かるような気にもなりまして、その部分について書いてみようと思った次第です。
著者は冒頭で「英語学とは何か」という根本的な問いを呈し、その英訳である「English philology」の「philology」の定義を考えることで、その一つの説得的材料としようと次のような分類を紹介しています。
①人間の言語習慣の研究 ②言語習慣によって人間が成就することのできたものの研究、すなわち文明全体の研究 つまり、①は我々が普通に考える「言語学」、そして②は日本では「文献学」と呼ばれるものということになるようです。
このように見てみると「philology」とは、言語の研究から発して人類の文明全体の研究までも包含する恐ろしく広い学問領域だということになります。 そして、ここで重要あのはその広い領域の出発点が「言語」だという事実です。
本書の中でも、「言語は一民族の認識を開くカギである。その最内奥の精神生活を開くカギである。というよりもむしろ言語は最内奥の精神生活の表現である。言語がphilologyの(研究)対象の頂点ということになる。」と言っています。
つまり、言語の研究というのは人間の営みの根本だという主張です。私が理解したのはその程度のことだったのですが、言語を仕事としている私にとっては、それだけでも十分な収穫であったと納得しています。
文責:代表 秋山昌広