英語独習法 #290
2022年11月22日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英語独習法
【著者】 今井 むつみ
【出版社】 岩波新書
【価格】 ¥880 + 税
【購入】 こちら
著者の今井むつみ氏の著者は以前、代表ブログにおいて「ことばと思考」という言語と認識について論じた本をご紹介したことがありますが、彼女の専門は「言語学」ではなく「認知科学」です。
「認知科学」とは人の知覚、記憶、思考や学習の仕組みを心と脳の様々なレベルで理解しようとする学問で、今井氏はその中でも認知心理学の分野、特に子供の母語の習得を長年研究された結果、言語の習得過程には人の知覚、記憶、思考の発達が非常に深くかかわっていると言います。
しかしながら、英語教育における教授メソッドの多くは、そのような「認知科学」の知見に無関係に構築されており、いくら教師が分かりやすく教えようとしても学習者がそれをそのまま理解できないという結果が再生産され続けていると指摘されています。
まさに「言語学」ではなく「認知科学」の専門家ならではの視点です。
本書中には「認知科学」の研究結果として、人間の認知バイアスの強力さを確認する「バスケットとゴリラ実験」という衝撃的な実験が紹介されていました。
それは、「白チームが何回パスを回したか数えてください」という指示を出した上で以下の動画を流した後にその結果を報告してもらうという簡単なものですが、文字だけでの説明ではその衝撃が体感的には伝わりにくかったので、youtubeで確認してみました。
実際には、このビデオを見た後、パスの数の報告時にさらに何か変なことが起こらなかったかを確認するのですが、半数以上の人が特にないと報告します。
しかし、私を含めたその半数以上の人には本当に信じられないことですが、画面中央の非常に目立つ場所にゴリラが現れ、しかも胸をたたくという行為にまで及んでいるのです。
これほどまでに人間の認知には強力なバイアスがかかっていているのだということを思い知らされます。
本書は、「英語の達人」を目指す人のために、徹底的に「認知科学」の知見に基づいて書かれており、「目からうろこ」の指摘にあふれていました。
そんな大著を書かれた今井先生の研究者としての魅力にハマってしまった私は彼女の人となりをもっと知りたいと思い、youtubeでこんな動画を見つけました。
実際に動画でも確認すると、私が心から尊敬する「鳥飼先生」にも似た魅力を感じました。
また一人この業界のスターを見つけた気がしています。