日本人が「しなやか英語」を苦手とする理由
2021年11月20日 CATEGORY - 日本人と英語
以前に書籍紹介ブログにてご紹介した「伝わる英語表現法」からテーマをいただいて書いていきたいと思いますが、第一回目のテーマは「日本人の英語がしなやかでない」理由です。
書籍紹介ブログにおいて、
「私はランゲッジ・ヴィレッジのウェブサイトで、日本人が英語をスムーズに使えるようになるための重要なポイントとして、「しなやか英語」に着目してその重要性を訴えてきました。本書はまさにそのことをまるごと一冊で訴えています。」
と書きました。
具体的には、
① セーターを裏返しに着てしまった。
② 日本政府は北朝鮮に政治的圧力をかけるべきだ。
日本人はこのような二つの文章を見て、どちらが英語に訳しやすいかを聞いた時に、典型的な日本の英語教育を受けた方であるほど本来文章自体のレベルの高い②のような文章の方を選択しまいがちです。
私は、このバランスの悪さを、①のような文章を「しなやか英語」、②のような文章を「ごつごつ英語」と命名しつつ、超「ごつごつ英語」体質の日本の英語教育の問題点として指摘してきました。
私は、この問題を日本の英語教育が、英語を学習対象としてのみ扱ってきたことをその元凶と捉え、国内留学という「英語を使う環境」の提供という手段をもってそのバランスを取ろうと奮闘しています。
ただ、本書において著者は、そのようなバランスの悪さを生じさせてしまう本質的原因が実は、英語教育の仕組み以前に、英語と日本語の言語の本質的違いにあるという非常に興味深い指摘をされています。
その本質的違いとは、「そもそも英語は『しなやか』で日本語は『ごつごつ』している」というものです。
以下にその言及部分を引用します。
「日本語の大きな特徴として、漢語があります。例えば、『政治家が公約を実行した。』と言うのが日本語の表現として自然なわけで、日本語表現で漢語の役割は大きいのです。英語を日本語に通訳する時は、できるだけ漢語を使うようにすると、耳障りでない日本語になります。この場合、漢語と言っても難しい熟語ではなく、『公約』とか『実行』のような基本的な漢語を使うことです。それに対して、英語は常にやさしく分かりやすい言葉を使います。例えば、上記の日本語を自然な英語に直せば、『The politician did what he said he would do.』です。もちろん、『policy pledge』とか『execute』というような言葉はもちろん存在しますが、上記のような内容の発言をするときに前者のようなやさしく分かりやすい言葉を使う頻度の方が圧倒的に高いという意味です。(一部加筆修正)」
そもそも「漢語」とは、中国語を日本語に熟語として取り込んだものです。日本人は漢語を取り込む前は大和言葉という「しなやか」な日本語しか使っていませんでした。
上記の例(政治家が公約を実行した。)で言えば、英語と同じように「あの政をする人はやると言ったことをやった。」としか言えなかったわけです。
このように考えると、日本人は、自らにとって自然体の言葉である大和言葉の日本語の中に、中国語という異質な言語を正式に導入することによって熟語に概念を押し込むことを習慣にしてしまったということになります。
つまりこれは、人間の「思考の基礎」である言語自体が抽象化してしまった、もう少し直接的に言えば、自然体ではなくなったことを意味するのだと思います。
ですから、私たち日本人はそのことを自覚し、自然体な言語である英語を話す時にはまずは思考を「大和言葉」的にする試みができるかが勝負だということに気づかされます。
実はこの頭に浮かんだ「ごつごつ」した日本語を即座に「しなやかな」な日本語に言い換えるという方法は、アメリカ留学時代に知らない間になんとなくやっていたことでもありますが、ここまで的確に言い当てられると、改めてスッキリした気分になります。