日本人と英語

なぜ不定詞にはtoが付くのか

2021年2月21日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の歴史から考える英文法の『なぜ』」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目の今回は、前回の記事の最後に残した二つの疑問のうちの前者としてあげた「不定詞」についてです。

そもそも、この疑問は、「will の後にはその目的語として不定詞をとるのに、なぜwillの後の動詞にtoがつかないのか」というものでした。

ただ、この疑問は私たち文法を学習した日本人が不定詞の形は「to +動詞(の原形)」という知識を当たり前に持っているからこそ持つ疑問であって、実はその前に、「なぜ不定詞にはtoが付くのか」ということ自体に疑問を持ち、それを解決することが先決であるはずです。

そこで以下にそのことについて言及されている部分を引用します。

「元来不定詞にはtoはついていませんでした。不定詞の働きは動詞の観念を示すところにあります。辞書では動詞の見出し語に不定詞を使います。それは不定詞が動詞の観念を示すものであり、動詞を代表するものであるからです。不定詞は英語でinfinitiveと呼びます。これは『定まらない』という意味のラテン語に由来します。定まらないというのは、人称・そしてその単数複数の定めがないということです。現代英語でも動詞の活用形はそれぞれ人称・単複のそれぞれで決まっています。それは、一般動詞では三人称単数にs es を付けるくらいの違いしかなくなっていますが、be動詞で見ればそれがよくわかります。しかし、古英語の時代にはbe 動詞、一般動詞とも人称・単複ごとに別々の形が対応していたのです。その変化を『屈折』というのですが、現代英語ではこの屈折が大幅に消滅して、現在のようにほとんどが同じ形をしてしまうことになりました。ですから、かつては先に述べたように『辞書での見出し語のように動詞を代表するもの』として一つの形=(人称・単複により)定まらない形というわけです。」

ここまでが、不定詞の存在自体についての説明です。続いて、ではそれになぜtoが付くのかの説明に移ります。

「古英語では現代英語の代名詞のように一般名詞も含め格変化をしました。そのため、動詞を名詞化した不定詞も同じように格変化をしたのです。しかも、~へというように方向を表す言い方として『与格』という今は存在しない形もあったのですが、この与格は方向の前置詞であるtoを従えました。例えば、『言う』という古英語の動詞の与格はsecgenneでto を従えてto secgenneで『言う方向に』という意味になります。時代は中英語の時代に移り、前述のように名詞や動詞の屈折語尾が消えていきました。それによって不定詞は現在形と同じ形になり、形の上からは区別できなくなりました。その流れに伴い不定詞という意識は薄れていきました。ただ、to sayのようにtoを従えた形をとる不定詞の与格はその形が明確であることから、不定詞としての存在感を高めていきました。その結果、不定詞と言えば、今ではもっぱらtoが付いた形を示すようになったのです。つまり、現在このtoは不定詞であることを示す標識となったのです。」

ここでようやく、そもそもの「will の後にはその目的語として不定詞をとるのに、なぜwillの後の動詞にtoがつかないのか」についての回答ができるようになります。

そうです。

古英語時代の動詞willanが目的語に不定詞をとると、『~することを望む』という意味から『~するつもりである』となるという説明をしましたが、この「~する(こと)」という不定詞は与格ではなく、目的格であったため、toという前置詞はつきません。

だから、動詞willanの後に不定詞の目的格がそのまま置かれた、そしてその目的格の語尾は焼失した、だからtoが付かずに不定詞としてそのまま存在している。

そのため、「will の後にはその目的語として不定詞をとるのに、なぜwillの後の動詞にtoがつかない」ということになるわけです。

 

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