なぜ「I ate a chicken.」はグロいのか
2024年1月25日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語脳スイッチ!#307」からテーマをいただいて書いていますが、第五回目のテーマは、「可算名詞と不可算名詞」です。
「可算名詞」と「不可算名詞」に関しては、以前の「可算名詞か不可算名詞かは『物の見方』次第」の記事における
「その名詞をナタのようなもので、パカーンと二つに割ったとして、その二つに分かれたものが、もともとの物と同じ性質を持っているならば、『不可算』、壊れてしまってもはやその性質を維持していないなら『可算』です。」
との説明で解決済みのはずです。
ただ本書には、その「もともとの物と同じ性質を持っている(不可算)名詞」と「壊れてしまってもはやその性質を維持していない(可算)名詞」という「物の見方」に関するもっと踏み込んだ説明がありましたのでご紹介します。
「英語の世界での『数えられる』とはいったいどういうことなのか?つまり、英語にとっての『1(one)』とはどういうことなのでしょうか。英語の世界の『1つ』とは『形が丸ごと一つ』そろっていることを意味します。つまり、『机』や『スマホ』と呼べる形が丸ごと一つそろって存在していることです。(形の仲間)一方で氷やチョコレートのように『いくら砕いてもその破片もやはり氷でありチョコレートである』ものには『これ以上崩したらそれと呼べなくなる形』がなく、『1つ』の素になる決まった『形』が存在していません。(材質・性質の仲間)。そして英語には、『形が1つ丸ごとそろって存在している』ことを意味する言葉があります。それがa anという冠詞です。生きている鶏が1羽いれば、それは鶏という形が丸ごとそろって存在しているので、a chickenです。」
だから、I saw a chicken runnning around the yard.とは言えても、I ate a chicken yesterday.とは決して言えないのです。
走ることができるのは、「鶏という形が丸ごとそろって存在している」a chicken(形の仲間)です。
そして、食べることができるのは、「いくら切っても切っても鶏肉であり続ける」chicken(材質・性質の仲間)です。
ですから、冠詞に関して無頓着な私たち日本人が軽い気持ちで「I ate a chicken.」などと言おうものなら、それを聞いた英語話者は、生きたニワトリを血を滴らせながらそのままむしゃむしゃ食べたかのような野蛮で残酷なイメージで受け取られてしまうかもしれません。
まあ、実際にはそこまで誤解する人はほとんどいないとは思いますが、それぐらいの違和感を与える恐れがあることなのだと受け止めておけば、「冠詞」が存在しない日本語を母語に持つ私たち日本人が冠詞を使いこなす近道になるはずです。