グループレッスンの価値
2021年3月7日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにて「総理通訳の外国語勉強法」をご紹介しましたが、本書からいくつかテーマをいただいて書いていきたいと思います。
第一回目のテーマは「グループレッスン」についてです。
基本的に、外国語教育におけるグループレッスンは個人レッスンと比較すれば、経営側の都合で仕方なくそのような仕組みにしているものであって、すべての制約を取り払えるのであれば個人レッスンが理想であると思われています。
確かに制約を取り払った上でどちらかしか選べないという条件なら、個人レッスンを選ぶ可能性の方が高いことは認めますが、それでも私はそれぞれに特有のメリットがあり、場合によってはグループレッスンの方が理想的なケースもありうると考えてきました。
本書には、まさにこの「グループレッスン」と「個人レッスン」の両方についての詳細解説が書かれていましたのでそちらを引用してみることにしました。
「グループレッスンでは自分の番がなかなか回ってこず、非効率だと考える方もいます。しかし、これは大きな間違いです。グループの良いところは何よりも他の生徒がどのような発言をするのか、それをいわゆる文法の正確さや表現などを含めた語学面と、その内容面との比較を可能にするところです。自分より良いところは素直に受け入れることが重要です。もし、そのグループで自分が一番レベルの低い場合には絶好のチャンスです。うまい人の外国語は自分とは何が違うのか、発音、語彙力、表現力、とにかくうまい人から全部盗むのは語学学習の鉄則です。逆にグループが自分よりレベルの低い人ばかりだった場合には、自分の語学以下にうまいかを見せつけることは私の経験上ビジネスのプレゼン本番で必ず役に立ちます。何よりも自分の方が語学ができる、優位に立っていると自信を持って臨むことが成功の秘訣だからです。」
まずは、グループで自分が一番レベルの低い場合について。
この場合の効果の高さについては私は自分の経験をもって強く同意します。
というのも、人間にとって最も教育効果が高いのは、自分の現在のレベルと比べて大きな差があるお手本より、自分よりも少しだけレベルの高いお手本を参考にした場合だからです。
以前の記事で、私はアメリカ留学時代にホームステイ先での自分を含めた6人くらいの外国人とホストファミリーと一緒に囲む「夕食の時間」の効果に驚き、それがランゲッジ・ヴィレッジの国内留学のヒントになったと書きました。
それは、「その表現いただき!」といった瞬間がいくつもある私にとってはそこら中に宝物が転がっているような貴重な時間だったのですが、後から考えてみると「その表現いただき!」と感じたフレーズは、ネイティブであるホストマザーのフレーズよりも、圧倒的に自分以外の外国人留学生から発せられたフレーズの方が多かったことに気づきました。
一方、グループが自分よりレベルの低い人ばかりだった場合について。
これについての本書の記述は前者の場合に比べて説得力が弱いように思われる方は多いのではないでしょうか。私も一瞬「ちょっと無理があるのでは」と感じたくらいですから。
ただ、再び自分の経験に絡めて思いだしてみたのですが、こちらも以前の記事で書いた記憶がありますが、自分の英語の力に対する自信がついたのは、自分よりずっと英語ができない留学開始直後の日本人の友人を病院に連れていき、その病状などの通訳をしてあげてものすごくありがたがられた時でした。
日本人の多くが英語ができないと思っている原因の一つに、「(会話に対する)自信のなさ」があります。
このせいで、実際の能力よりも自分を低く評価し、ネイティブの前で委縮してしまうことで、余計に会話に対する自信を無くすという負のスパイラルが働いてしまいがちです。
実は、「自分が一番英語ができる」という経験はなかなかできるものではありません。
ですから、グループが自分よりレベルの低い人ばかりだった場合にやる気をなくしてしまうのではなく、むしろそれをチャンスととらえ、「その場を自分が支配する」という姿勢で臨むことができれば、前者の場合よりもむしろ教育効果が高くなる可能性が十分にあります。
ただし、当然のことですが、前者も後者もそのレベルのばらつきの程度は許容範囲に抑える必要があります。
当然ですが、TOEIC900と500の人を一緒のグループに入れるなんてことは避けなければなりませんが、600~800くらいの間の違いというのは十分に許容範囲にあると考えています。