シャドーイング
2016年7月3日 CATEGORY - 日本人と英語
前回、鳥飼玖美子先生の新刊「本物の英語力」の中から「文法格差」というテーマをいただき議論しましたが、今回は、英語学習法の一つ「シャドーイング」について取り上げたいと思います。
前回の記事の中でも言及したランゲッジ・ヴィレッジが主宰する「中三文法を二泊三日で血肉にする合宿講座」ですが、この講座の一番のポイントは、毎回の講座の最後に行う「宿題」の作成とその「確認」の作業にあります。
具体的には、その回までに習った文法項目をすべて使用した日本文をまず作り、それを英語に直すというものです。
つまり、日本語の母国語話者である日本人が英語を話すということは、まず言いたいことは日本語で頭に浮かび、それを英語に「訳す」ということに他なりません。
しかし、実際の会話は、その作業に対して時間を与えてくれません。
日本人が英語を話すときには、その日本語で頭に浮かんだものを英語に「訳す」ということに費やす時間をどこまで縮められるかが勝負ということになります。
ですから、当該講座において、回が進んでいくと、接続詞も、関係代名詞も、受動態も、現在完了形もというように文法項目が満載になったものでも、一問一分で完了するというルールは変わりません。
しかし、考えてみれば、1分という時間でさえ、会話のことを考えたら全然遅いわけで、理想は0.5秒だと発破をかけながら行います。
この一分を0.5秒に近づけることが日本人にとっての会話トレーニングなのだと信じています。そして、それをもっと実践的に行う環境が、ランゲッジ・ヴィレッジの国内留学であると考えています。
本書において、この1分を0.5秒に縮めるためのトレーニングとして、大きなヒントになる学習法が提示されていたのでご紹介します。
それは、「シャドーイング」というものです。
これは、第二言語習得におけるリスニングやスピーキング能力の改善のために音声を聞いた後、即座に復唱する学習方法ですが、同時通訳のトレーニングとしても用いられるものです。
同時通訳は、耳から聞こえた言語を別の言語に訳して瞬時に口から出す、つまり「聞く」と「話す」を同時進行で行うという大変に複雑な作業で、通常の会話ではありえないものです。
これを実現するために、段階的なトレーニングとしてまずは、「訳す」という作業無しで「他人の言っていることをそのまま口から出す」ことに慣れさせるのです。
もちろん、私たちやるべきことは、「他人の言っていること」を「自分の言っていること」に置き換えて行うということなので、目標は、同時通訳と比べるとずっと楽なものであると言えるでしょう。
いずれにしても、ここで重要なのは、「他人(自分)の言っていることをそのまま口から出す」ことに慣れさせることで、一塊の英語を口から出すことを「自動化」するということです。
そして、そのことが達成されたら、今度は次の段階として、「訳す」という作業のトレーニングに移行するということです。
この「シャドーイング」という方法も、学校教育ではなかなかお目にかかることができないものですが、1分を0.5秒に縮めるためのトレーニングとしては、効果的だと思いました。
それでは、次回は、次の段階として「訳す」という作業のトレーニングについて本書からヒントをいただこうと思います。