「不定詞」こそが英文法の最難関
2022年5月15日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法再入門」からテーマをいただいて書いてきましたが、第五回目の今回で最終回です。
最終回のテーマは「不定詞」です。
本書において著者は、かつてある会合で東京大学で教鞭をとられている著名な言語学者と「英文法のすべての分野のうち、学習者にとってどの項目が最も難しいか」というテーマで議論した際に、その言語学者が「不定詞こそが英文法の最難関だと思います。」という主張をされ、その主張に対して深く同意したことを回想されています。
そして、私もかつて「不定詞の形容詞的用法の訳し方」というブログ記事の中で著者たちと同じような感想を述べたことを思い出しました。
まず、著者は不定詞を英文法の最難関だとする以下の三つの理由を述べています。
① 用法が多い。
② 情報量が少なく、意味が曖昧になりうる表現である。
③ 日本語ではほぼ不要な情報処理が必要になる。
これではそれこそ情報量が少なすぎて分かりませんので一つずつ説明します。
① 用法が多い。
これは比較的分かりやすいと思います。「不定詞」には(1)名詞的用法(2)形容詞的用法(3)副詞的用法の三つがあって使用されている不定詞がそのうちのいずれかをそれぞれ判断する必要があるからです。
② 情報量が少なく、意味が曖昧になりうる表現である。
これはまさに私がかつてのブログ記事「不定詞の形容詞的用法の訳し方」で詳細した内容ですのでここでは割愛します。
③ 日本語ではほぼ不要な情報処理が必要になる。
これでは全く意味不明ですので以下、本書より具体的な事例を引用します。
・I was sad to hear the news.(私はそのニュースを聞いて悲しんだ。)
・My son was glad to read the letter.(息子はその手紙を読んで喜んだ。)
・You are crazy to say such a thing.(そんなことを言うとはあなたはおかしい。)
・She is lucky to have a beautiful voice.(声が美しいなんて彼女はラッキーだ。)
「(全ての文はSVCでCが形容詞のパターンで、副詞的用法ということになります。しかも、)最初の2文は、用いられている形容詞が感情に関するものです。そして、不定詞句がその感情の原因を表します。一方、次の2文では形容詞が人の性格・気質に関するものや、人が置かれている境遇に関するものです。そして、その後ろの不定詞句は、そのように判断した根拠を示しています。」
このように、まずいくつかある用法のうちのどれかを判断する必要があるとともに、その用法の中でも例外的な使用方法であるという判断をしなければこれらの文の意味を本質的に理解することはできません。
つまり、「③ 日本語ではほぼ不要な情報処理が必要になる。」とは、普段母語ではほとんど避けて通ることができている作業に直面しなければならないという意味で非常に困難を感じさせられるということです。
しかも、これらはこのような最難関とされる「不定詞」の中でも最難関とされるにもかかわらず、例えば「I am very happy to see you.=あなたに会えてうれしいです。」のように、まだまだ英文法の基礎すら固まっていない段階から「決まり文句」のようにして丸暗記させられるわけです。
私は、このような教授方法に対して強い疑問を持たざるを得ません。
まさにこの点こそ、日本の学校英語教育の不完全性であり、多くの人が英語に手ごたえを掴めていない大きな原因となっていると思います。