日本人と英語

「なんで『全員が』英語やるの?」の歴史

2018年9月12日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に書籍紹介ブログにてご紹介した「『なんで英語やるの?』の戦後史」からいくつかテーマをいただいて書いていこうと思います。

第一回目の今回は、日本の戦前から戦後にかけての英語必修化、特に中学校英語の必修化の歴史的な背景について考えてみたいと思います。

皆さんの多くは、中学校の英語(外国語)が必修であることは当たり前であってそこに何の疑問も持たれていないかと思われます。

ですが、本書ではその当たり前が実は当たり前ではなく、かなり複雑な歴史をたどって現在の「当たり前」につながっていることを本書は教えてくれています。

まずはその歴史を概観してみたいと思います。

まず戦前の旧学制下では、外国語教育は義務教育では行われていません。

そして、戦後、新制中学発足とともに、「選択科目」としてスタートしました。その理由は、英語という教科は他の教科に比べて必要性に地域差・個人差があることから、外国語科は理念として、生徒や地域の必要性・興味に応じて履修すればよいとされ、実際に履修しない生徒が少なからず存在していました。その意味で、名実ともに英語(外国語)は選択科目として扱われていたことになります。

その「名」と「実」が変わり始めるのが1950年代です。

1950年代に入ると、ほぼすべての中学生が中学一年生の時点では英語を履修するようになり、「全生徒が英語(外国語)を一度は学ぶ」という意味での「事実上の必修化」が達成されました。

ただ、この時期でも特に農漁村地域では英語の必要性は感じられいない現状があり、「事実上の必修化」に対しては賛成・反対の大きな議論が巻き起こりました。

1960年代には、都市と農漁村地域においてその達成のスピードには違いがありましたが、最終的に中学三年生の履修率が100%に近づき、今日的な意味での「事実上の必修化」がほぼ達成されました。

1970年以降は、このブログにおいても取り上げたことのある「平泉・渡部英語大論争」のように、英語教育の義務教育上の正当性を争うような議論もありましたが、基本的には「英語=必修科目」という概念がほぼ常識として浸透していきました。

上記のように中学における英語教育の歴史を見てきましたが、「事実上の必修化」という言葉に違和感を感じられた方も多いのではないでしょうか。

実は、日本の中学校における英語(外国語)の必修化は、長い間「実」だけであり、「名」すなわち、制度上も必修化されたのは実は、1998年に改定された学習指導要領が施行された2002年だったのです。

(現在、英語以外の外国語として、韓国語と中国語を一部の私立学校が教えているにとどまり、大学入試センター試験の受験も2012年より、事前届けが必要となっている。その意味でも、英語=外国語のイメージは現実に近いといえる。)

その公式な理由は、「国際化の進展に対応するため」です。

ですが、「国際化の進展」は少なくとも日本経済が世界を席巻した1980年代には実現していたわけで、1998年に改定したというのは、どう考えても「事実上の必修化」を現状の制度に合わせたものと捉えられるように思います。

次の記事では、このような経緯をたどるに至った背景についてもう少し詳しく見てみたいと思います。