日本人と英語

「公平性」への挑戦

2018年7月29日 CATEGORY - 日本人と英語

前回に引き続いて「全解説 英語革命2020」からテーマをいただいて書いていきたいと思います。

第二回目のテーマは、新しい試験体制における「公平性」に関わる問題です。

2020年の英語試験改革にはまだ解決がなされていない課題が多いと前回の記事の最後で書きましたが、その最大の課題が「公平性の担保」だと考えています。

本書には、まだ不十分ではあるにしても現時点においてできうる限りの対処がなされている事実についても明らかにされており、これらについては批判的推進者(?)としての安河内先生のご尽力があったのではないかということが想像されます。

それでは、それらの対処について具体的に見ていきたいと思います。

前回の記事にて指摘した「測定可能範囲」と「対象使用言語領域」の異なる複数のテストを認定することで、それら相互の点数の互換性の問題で「不公平」の問題が生じるという指摘をしました。

本書には、次のような記述がありました。

「各大学や学部は、大学入試センターが認定した民間検定試験の中から、どの試験を入試に採用するか独自に決めます。」

この文章から読み取れる情報は限定的ですが、仮に各大学が将来の学生に求めるレベルを勘案してそれぞれ1つの試験を採用するとすれば、少なくとも「互換性」の問題の問題は解決することになります。

ただし、現在のセンター試験のようにいわゆる「統一試験」のようなすべての受験生を一律に評価するという試験として考えるとこの問題は解決されません。

そして、もう一つ。

今までのセンター試験のように一年に一度しか受験機会がないという仕組みから、年に複数回受験機会がある民間試験を導入することにより、経済的に豊かな家庭の生徒が何度も受験することで、いわゆる「試験慣れ」による「経済的不公平」の問題が生じるという可能性が指摘されていました。

これについては以下のような記述がありました。

「受験生は志望する大学が採用した試験の中から希望するものを、4/1から12/31までの間に2回受験することができます。同じ試験を2回受けても、別々の試験を1回ずつでも構いません。英検なり、TOEFLなりを受ける前に、『あなたはこの結果を大学に提出しますか』という項目にチェックを入れ、署名して受験します。何回も受けることは自由ですが、受ける前に申告できるのは2回限り。結果が出た後に点数が良かった回を選んで提出することはできません。」

この仕組みによって、確かに何度も受けることによるいわゆる「試験慣れ」へのケアは限定的ですが、それでも、後出しじゃんけんができなくなったという点で、「経済的不公平」の問題は当初の想定よりはずっと改善されることになります。

以上のように、どちらの問題も完全にその疑念が払しょくされたわけではありませんが、当初想定されていた問題の大きさから比べれば相当に改善されているように思えます。

しかしながら、大学入試は受験生の一生に関わる大きな問題ですから、それを運営する側にはその疑念がゼロになるまでしっかりと責任をもって取り組む必要があります。

安河内先生には、今後も批判的推進者(?)としてますますその責任を果たしていただきたいと思います。