教えることは「戦略」そのもの
2018年2月25日 CATEGORY - 日本人と英語
先日書籍紹介ブログにてご紹介した「英語は教わったように教えるな」よりテーマをいただいて書いていきたいと思いますが、第一回目の今回は「戦略的に教える」ことについてです。
教師が、教科書をそのまま教えている姿を見ると私は心から腹立たしくなります。それは、自分自身が中高生の時からです。
なぜなら、教科書をそのまま教えるのであれば、それは教科書をそのまま読んでおいてください、ということでもよいでしょうし、最も教えるのが上手だと思われる教師の授業をビデオに撮って、全国に配信することでもよいということになってしまい、人件費をかけて各クラスに教師を配置する必要性を否定してしまうことになるからです。
教師の仕事の存在意義は、教えるべき生徒の集団の現時点での状況を把握して、この集団を最終的に目標とするところまで届かせるためにはどういった方法をとるべきかということを考えながら進め、途中で進捗状況を確認しながら適宜修正を図ることにあると思うからです。
このことはまさしく戦略策定行為そのものだと思います。
若林俊輔氏は、中学英語の現場の教師から在野の学者という一貫した反体制の立場から、本来あるべき教師像について厳しい指摘を投げかけ続けた人生を送られました。
本書はそんな氏の生きざまと現在の英語教育の状態とに鑑み、彼の教えを受けた5名の学者がかつて彼が学校英語教育に対して発してきた辛辣な発言を再編成したものですが、彼の主張はまさに、この教師一人一人の「戦略策定」の足りなさに対する叱咤激励であったことに尽きるような印象を受けました。
彼は、一見そんな細かいところまでアラを見つけて批判しなくてもいいのに、、、と思ってしまうほどの細かさで、当時の英語教育に対して攻撃を加えていたわけですが、その彼の姿勢こそが、一人一人の現場の教師に求められるべきものなのだと思ったのです。
今当たり前のようにやっている教え方は生徒の理解にとって最良かどうか。
全ての教師が、この視点を自分自身の一挙手一投足に対して当てながら反省をし、自身の手法を修正することを継続するなら、教育指導要領の内容・方向性に関わらず、理想の英語教育に近づいているはずです。
そのことができていない現状の英語教育に対する警鐘の意味が、時代を超えて彼の言葉を再構成した本書の出版に込められているような気がします。