日本人と英語

「熟見」という映画活用学習法のススメ

2022年11月30日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語独習法」からテーマをいただいて書いていきますが、第六回目のテーマは「映画活用学習法」です。

前回の記事で、リーディング(文字情報)による語彙学習法として「多読」よりも「熟読」が優れていることを確認しましたが、今回はリスニング(音声情報)からの語彙学習法としての「映画の活用」について考えてみます。

そもそも私は、映画の英語学習への活用については「懐疑的」な立場で、その活用の範囲を「専門用語」の学習に限定するべきだと「映画活用専門英語学習法」というページをつくって主張してきました。

しかし、著者の説明を受け、私が今まで持っていた「映画の活用」のイメージはまさに「(映画の)多聴」にとどまるものだったのだと思い知らされました。

映画の英語学習への活用であっても、著者が主張するように、「多聴」ならぬ「熟聴(著者の言うところの熟見)」であれば、一般的な英語学習にも十分に利用価値はあると考えなおしました。

それでは以下に、本書より「熟見」の概要について該当部分を引用します。

「深い情報処理をして単語を覚え、語彙を増やすのにおススメなのは、映画の『熟見』である。映画には視覚情報の他、セリフ、音楽、効果音などの聴覚情報、ストーリーの流れの中での文脈情報など、非常にリッチな情報が含まれている。しかし、(リーディングにおける多読と同様)大雑把に意味をとろうとするときの情報処理の仕方では、語彙を増やすことにはつながらない。人は、内容を大まかにつかもうとするときは細かい言い回しにはあまり注意を向けないからである。そこで、提案するのが『熟見』だ。お気に入りの映画のセリフの一言一言を正確に聞き取れるようになるまで何度も見るのである。映画では前後の単語がくっついて発音されたり、代名詞や前置詞などの機能語が非常に弱く発音されたりするので、耳を澄まして聞いても音として聞こえないことも多い上、省略して完全な文を言わないこともよくある。映画のセリフを一語一語理解するということは、実際には聞こえない単語を含めて話し手が心の中で発話した英文を自分で行間を埋めて復元する作業なのである。この練習はリアルな会話を聞き取るのにも非常に役立つ。」

続いて、その具体的な手順についてまとめてみます。

① まず字幕なしでその映画を通しで見てその映画が自分のレベル(字幕なしでもなんとか内容が分かるレベル)に適したものか判断する。

② 全セリフの聞き取りを目指しながらも最初は日本語字幕付きで何度か見る。(その際、聞こえない部分をチェックしておく。)

③  ②でチェックした部分を繰り返し見る。

④ それでもどうしても聞き取れない単語やフレーズを英語字幕に切り替え把握する。

ここでの最大のポイントは、「最初に日本語字幕付きで見る」ところだと思われます。

というのも、普通に考えれば「日本語字幕」を見てしまうと分かったふりをしてしまって却って記憶にマイナスなように感じられますが、そうではないようなのです。

ここでも著者の主張を引用します。

「まず、日本語字幕からどのような意味のことを言っているのかが分かると、意味を理解しようとする認知の負荷が減る。軽減された情報処理のリソースを、単語一つ一つを正確に聞き取ることに振り向けることができる。セリフを意味のレベルで大雑把に理解するという作業から、丁寧に一語一語聞き取るという別のレベルの認知処理に切り替えやすくなる。次に、日本語の翻訳を見ることによって次に何を言うかを予測しながら英語を聞くことができる。予測すること自体が深い情報処理を必要とするので、聞き取った単語や文が記憶に残りやすくなる。日本語字幕で聞き取れるところまで頑張り、最後に英語字幕を見るとたいていびっくりする。日本語字幕を見ながら認識できないセリフには、予測できなかった単語や言い回しが含まれていることがほとんどで、この経験が語彙の増強につながる。予測が裏切られたとき、最も深い情報処理が起こり、記憶に深く刻印されるのである。」

まさにそのこころは、前回の「語彙記憶法」と同様、人間の情報処理の仕組みが「目的思考的」であるということを利用しつつ、「意外性」によってその情報を深く処理することにあるようです。

 

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