「遊ぶ」をどう英訳するか
2022年6月3日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「日本語脳では出てこない英語フレーズ80」からテーマをいただいて書いてきましたが、第三回目の今回が最終回です。
前回の「日本語と英語における発想の『共通点』と『相違点』」では、地理的にも文化的にも異なる両言語とはいえど、どちらも所詮は人間の道具であるわけで、結局のところ「共通点」が強調される結果となりました。
最終回では、再度「相違点」に目を向け、私たちにとって「身近な動詞」の訳し方をテーマとして取り上げることにしました。
というのも、アメリカ留学時代に私が苦労した対象はアカデミックで高尚な表現ではなく、むしろ「身近な動詞」を使った表現だったからです。
その中でも最も厄介で最後までしっくりくることのなかったものが「遊ぶ」という動詞です。
この「遊ぶ」を和英辞書で調べると当然ですが誰でも知っている「play」が最初に出てきて、その後「to have a good time」や「enjoy」などが続きます。
ただ、アメリカでの生活で私の頭に浮かんだ「遊ぶ」という日本語表現は、例えば「遊んでばかりいたので試験で失敗した」といったものであり、これを「I failed the test because I had played.」などと英訳せざるを得ないのですが、その結果、それに対する相手の「微妙な反応」に悩まされるばかりでした。
しかしそれ以外の適切な表現をなかなか見つけることができず、かなり長い間「play」を使い続けながら悶々としていました。
そのような相手方(英語ネイティヴ話者)の「微妙な反応」に悩まされながら、何とか最終的に「hang around」とか「hang out」といった「英語脳」的表現に最終的に出会うことができたのですが、それらにたどり着くまでに私が払った代償はかなり大きなものでした。
書籍紹介ブログの記事において私は「これ(本書)だけで満足されてしまったらランゲッジ・ヴィレッジとしては商売あがったりですが、思わず膝を叩きたくなるような表現が満載です」と書きましたが、その代償の大きさを思うとこの言葉は確かに本心からのものです。
ここで本書より「遊ぶ」という表現についての解説を以下に引用します。
「私の友人の話です。『アメリカからの留学生MaryにLet’s play together this weekend.と言ったらすごく怒って立ち去って行った』と怪訝な顔で私に尋ねてきました。皆さんも『遊ぶ』と言いたいときにはplayが思いつくと思います。playは『気晴らしに活動する』という意味で、スポーツや演劇、楽器演奏などの他、『玩具やゲームで遊ぶ』という意味です。ところが、成人がplayという語を使うと『エッチ(な遊び)をする』という意味で使われるのです。そこで、友達と映画を観たり飲んだり街をぶらついて『遊ぶ』場合は『hang out』を使います。」
代償の大きさを分かっていただけましたでしょうか。(笑)
このように経験者が日本語で説明してしまえばそれまでですが、実際に経験的に理解するにはそのような「恥ずかしい」経験を何度も積み重ねなければなりません。
しかし、そのつらい経験は、生涯忘れられない記憶として頭の中に刻み込まれ決して忘れることはないというメリットと引き換えられるのです。
「人の幸せと苦労は円を半分に切ったものであり、小さな幸せは小さな苦労と、大きな幸せは大きな苦労と背中合わせだ」とはよく言ったものです。