「will」は現在形である
2022年8月25日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法を哲学する 」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「法助動詞 will」です。
私たちは中学校の英語の授業で「時制」という概念を学びました。
それはざっくりと時間軸を左から右に流れていく、「過去形」「現在形」「未来形」というものです。
しかし、厳密に言うとこのような理解は正しくないと本書で明確に指摘されています。
なぜなら、英語を含むヨーロッパ言語において「時制」とは、動詞の語尾の活用によってあらわされることになっているからです。
そう考えると英語には、三人称単数現在の「s」の変化を含む「現在形」と「ed」もしくは「不規則動詞」の変化のある「過去形」の二つしか「時制」は存在しないことになります。(フランス語、スペイン語、イタリア語などラテン語の子孫には「未来」にも動詞の活用がありますので「未来形」は存在する。)
実際に、英語で(日本語でも)「パーティーは7時に始まります。」を3時の時点でいう場合にも、「The party starts at seven.」と言って何ら差し支えありません。
ただ一方で、「The party will start at seven.」という言い方もあります。そして、普通私たちはこれを「未来形」だと思っています。
この点についてどう理解したらよいのか、本書では次のような解説をしてくれています。
「これは単に3時の時点ではいまだ事実になっていないので、事実の表明と受け取られないためにwillを挟んだだけだと解釈すべきです。ただ、そう解釈するなら、これから起こることを予測したり推断したりする言い方すべてが未来形になってしまいます。例えば、The party can start at seven.でもThe party may start at seven.でもThe party must start at seven.でも。しかしそれらにはそれら予測や推断の程度、言ってみれば主観が入ってきてしまうので、そういった程度感覚とは無縁のwillが一番客観的だということでこれが使われます。未来に起こることを、あたかも出来事自体の動きに任せていうことができる。そういう、いわば『出来事任せの構え(心のモード)』を法助動詞willは醸し出すというわけです。こうして三人称主語(一人称や二人称には意志という主観が入ってしまうので)にしたwillは、外界の今後の動きや傾向を客観化して表現する物言いになりました。(一部加筆修正)」
このように、willを使って「将来の推測」をすることで「未来」を表現することができるようになります。
しかし、それでも使われているものが法助動詞であるwillの「現在形」であることは厳然たる事実なので、やはり「時制」としては「現在形」と言わねばなりません。