日本人と英語

テンス(時制)とアスペクト(時相)について

2022年8月25日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法を哲学する 」からテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは「テンスとアスペクト」です。

第二回目の「willは現在形である」にて、私たちが「時制」の一つであると思っている「未来形」は「時制ではない」という確認をしましたが、実は「未来形」以外の「進行形」と「完了形」も「時制ではない」ということを今回は確認したいと思います。

まず、確認から。

「進行形」の形は、be Ving(現在分詞)で現在進行形と過去進行形があります。

「完了形」の形は、have Ved (過去分詞)で現在完了形と過去完了形があります。

まあ、willのところで見ましたので、大体想像はつくと思いますが、beとhaveのところが現在である現在進行形と現在完了形は「時制(テンス)」としては「現在形」、beとhaveのところが過去である過去進行形と過去完了形は「時制」としては「過去形」ということになります。

では、「進行形」「完了形」は一体何なのかと言えば、これらは「時相(アスペクト)」という概念の形と言えます。

「時制(テンス)」とは、話の内容が現在の現実に関わることか、それとも過去の物語かを区別する枠組みであり、「時相(アスペクト)」とは、それぞれの動詞がそれぞれの位置でどのように「時制(時間)」と関わっているかを示すものです。

ですから、「現在時制」における「進行相(進行形ではない)」「完了相(完了形ではない)」、「過去時制」における「進行相」「完了相」という四つの組み合わせができるのです。

その上で、(現在分詞)はその動作が継続中であるという「相(様子)」を、(過去分詞)はその動作が完了したという「相(様子)」を表現します。

あくまで「時相(アスペクト)」は「様子」ですから、「時制(時間)」とは異なる概念ということになります。

ここで、本書から著者の教育者としての矜持が垣間見られる指摘をご紹介したいと思います。

「一般の学校において、過去進行形に現在分詞が、そして現在完了形に過去分詞が使われるという、生徒を混乱させるような文法用語を排したいと思っています。というのも、going は動詞goに継続または進行のアスペクトを付したもので『現在』とも『過去』とも関係はないからです。本書ではこれらの呼称を排し、現代の代表的な学習文法書の『ロングマン現代実例英文法』に倣って『ING分詞』『ED分詞』と呼ぶことにします。」

私も、日本の文法学界はあまりに「用語」のネーミングに無頓着すぎると思っています。本書の中でも著者は「仮定法」を「仮想法」と言い換えて使われていますが、私も自身が主宰する「文法講座」において「想念法」というオリジナルの言葉を作って対応しています。