「運」が果たす役割
2017年4月19日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先日も新刊を紹介しましたが、今回も新刊のご紹介となります。
「成功する人は偶然を味方にする」を読みました。
本書において主張されているのは、人間が成功するために必要な要素だと言われている「能力」「勤勉さ」「運」の三つのうちの重要性について、その占める割合の度合いとして「運」が他の二つと比べて圧倒的に高いという事実です。
逆に言えば、「能力」と「勤勉さ」というものは「運」に比べたら大した重要性はないということになります。
しかも、その「運」の重要性の割合は経済が成長すればするほど高まっていくといいます。
なぜなら、経済が成長するにしたがって、ほんのわずかなコストや品質の優位性が勝敗を分けることになる、言い換えれば、小さな偶然によって簡単に市場の情勢が変わり、それが巨万の富を得るかそれとも経済的に破綻するかの分かれ目となるからです。
すなわち、「運」が「一人勝ち」を支配するということです。
それは、生産性の向上に伴う輸送の効率化、通信の効率化によって、私たちが数少ないより優秀なサービス提供者にアクセスしやすくなったことから生じています。
100年前だったら音楽を聴く方法は、街にあるコンサート会場に行くことでした。そのため、各街には、そこそこ能力のある演奏家が演奏家としてお互いしのぎを削りながらも生計を立てていました。
しかし、現在では最高に優秀な演奏家の演奏を自宅で聞くことができますし、実際に生で聞きたい場合にも、比較的大きな都市に拠点を持つ比較的優秀な演奏家の演奏を自分自身がその都市まで簡単に移動することで聞くことができます。
そのため、今まで地元で活躍していたような一般的なレベルの演奏家は完全に淘汰されてしまいました。
このことからもわかるように、明らかに「能力」より「運」によって「一人勝ち」が実現されていることが分かります。
この「運」の重要性について本書ではアメリカのある政治家の次の言葉印象的でしたのでご紹介します。
「この国には一人の力で豊かになった人はいません。あなたは工場を立てたかもしれない。、、、それは素晴らしいことですが、製品を出荷する時に使う道路は私たちみんなが支払いをしてできたものです。社員として雇用するのは、私たちみんなが教育費を負担した人です。工場の中で安全に過ごせるのは、みんなが支払いをしている警察と消防のおかげです。あなたが工場を建て成功したのは素晴らしいことです。これからも続けていただきたい。ですが、社会的契約の基本の一つは、契約を守り次世代の子供たちのために恩送りをすることです。」
どんなに事業に成功した人でも、そもそもそのような事業にチャレンジできるような「国」、「時代」、「環境」に生まれたという「運」があったからこそ成功できたのであって、その人の「能力」や「勤勉さ」などは、その「運」に比べたら大したことない!ということに心から同意してしまいました。
経済は成長し、「運」の占める割合が高まるからこそ、上記の言葉のように、成功したとしてもそれを自分以外のだれかのおかげが前提にあるという「謙虚さ」を持つべきことに気づかされました。
しかし、一方で「運」の占める割合が高いという事実を真正面から受け止めてしまうと、人間の発展への意欲に対して大いなる悪影響を与えてしまう恐れがあることも考えなければなりません。
なぜなら、結局は「運」がなければ「勤勉さ」をもって「能力」を身に着けても成功できるとは限らないという認識を多くの人間が持てば、土俵に乗る意欲自体がそがれてしまい、競争が起こりにくくなるからです。
では、私たちはこの三つの要素についてどのように考えて生きていくべきでしょうか。
この問いについて非常に納得がいく形で答えを示してくれる言葉を本書では提示してくれていましたので、最後にそれをご紹介してこの記事を終わりにしたいと思います。
「将来のすべての実績は自分ひとりで成し遂げるもの、過去のすべての成功は(自分以外の誰かからの)大いなる恩恵を受けたものと考えるべきである。人生を歩むにつれて自分がどれだけの功績に値するかについての考えは変わる。人生を始めるときは、自分のすることはすべて自分がコントロールしているという幻想を抱くといい。人生を終えるときは総じて、自分の功績以上のものを得たと認めるべきだ。」
バランス感覚に富んだ素晴らしい答えだと思います。