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かこさとしの命の使い方

2018年7月2日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2018年6月4日)、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀で紹介され、5月2日に92歳でなくなった絵本作家かこさとしさんついて書きたいと思います。

かこさとしさんは、もともと東京大学を卒業された後、化学の技術者としてサラリーマン生活を送られながら絵本の創作をされ、後に専業絵本作家として独立された方です。

作風は、『だるまちゃんとてんぐちゃん』に代表されるユーモラスな絵本から、「人間」「地球」「宇宙」「かわ」『たいふう』などの科学絵本に至るまで、非常に幅広い方です。

私自身は、子供のころに彼の作品に意識的に触れたことはなく、自分に子供ができ、彼らを通じてその存在を知ることとなったにすぎません。

それくらいの予備知識しかなかった私ですが、今回の番組を見て、「人間かこさとし」から非常に大きな衝撃を受けました。

彼の創作の原動力は、「戦争の後始末をしない大人にだけはなりたくなかった」というものです。

彼は、太平洋戦争において多くの大人が世の中に流され自分自身で考えることなく戦争を美化し、多くの若者を戦地に積極的に送り出してきたのに、敗戦となったとたんに「自分は最初から戦争には反対だった」とか「全て国家指導者が悪い」などと言って、自分自身の戦争に対する「後始末」を放棄したことを多くの子供たちに目の当たりにさせてしまったことへのうしろめたさから、死ぬまでその「後始末」を続けることを誓ったと言います。

彼の「後始末」とは、「自分自身で考え、判断できる子供の応援団になること」でした。

彼は「絵本」という方法でそれを実現しようとします。

子供向けだから、そんなに労力をかけなくても、そこそこの作品でごまかせるのではないか。正直言って、私は絵本という存在に対して、少なからずその見た目から、大人向けの作品と比較してそのような偏見があったことを告白しなければなりません。

しかし、この番組の中で彼は、「こどもさんをあなどってはいけない」ということを自分自身、そして自分の作品に関わるチームの合言葉にしていました。

それは、彼が絵本に取り組み始めてからずっと、そして彼の臨終から数週間前という今回の番組の取材期間においてもその姿勢を貫き通していたのです。

どんなに体調が悪く、苦しくても痛くても、納得いくまでそれをやめようとはしませんでした。

「この表現で小学校低学年の子供たちは理解ができるのか?」「このレベルではダメだから全部最初から没ボツにしなければ」

常にお世話をされていた娘さんがあまりの苦しそうな表情を見て、「もうお休みになったらどうですか?」という言葉に、「死んでから休むよ。」と応えられた彼の命の使い方を見て、私は絵本という創作手段に対しての従来の自分の認識を心から恥じました。

番組の最後に彼の作品の次のような言葉が映されていました。

「それぞれの人間の人生には限りがあるけれども、遺伝子という『生命の設計書』がこれからも人間とその集まりによって受け継がれていることを思えば、むやみに死を恐れることもないし、死の悲しみも乗り越えられることでしょう。」

だから、「死んでから休むよ。」なのだと理解しました。

そんな命の使い方ができたらいいなと思います。