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文系の私にも分かりやすい高校の数学

2023年7月9日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回、「低学歴国ニッポン」という本をご紹介しましたが、その中で一部のトップ校を除き、私立大学においては「指定校推薦」もしくは「総合型選抜」という形で、前年中での入学者の確定を行っているという事実を知りました。

すなわちこれは、中堅以下の私立大学に入学している人のほとんどが「一般入試」を経ずに大学生になっているという事実で、長年悪者扱いされてきた「偏差値」という基準がほとんど意味をなさなくなっていることを意味することであり、個人的には相当の衝撃を受けました。

そのことの是非はともかく、本書のおかげで久しぶりに「受験」について考えてみる機会を得たわけですが、私は個人的には受験としての勉強を楽しいと思ったことはありません。

ただ、受験科目で出てくる知識がなぜそうなるのかということを追求することはとても好きで、各教科に一人いるかいないかくらいの教科書に限定されない「なぜ」や「流れ」を重視する先生を捕まえては遠回りな質問をぶつけ、自分が納得するまで離しませんでした。

そのおかげで、純粋に勉強自体は好きになり、今でも何か少しでも疑問に思ったことは関連書籍をすぐに読み、このブログのネタにもなったりしています。

ただ、残念ながら「数学」、特に「高校からの数学」だけは、今までの人生の中でそのような先生には一人も出会うことができず、積極的に向き合いたくなるような気持ちを経験したことが一度もありませんでした。

そんな中で偶然目に入り、読み始めたのが「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください」でした。

今まで目にするのも嫌だった数学の本をなぜ読む気になったのかですが、この「東大の先生」というのが、以前に私がこのブログで「(一橋大学の)楠木教授とともに敬意をもってフォローさせていただきたい」とした東大の「渋滞学」の西成活裕教授だったからです。

非常に前置きが長くなってしまいましたが、以下に本書について書きたいと思います。

実際に読んでみた結果、「三角関数」や「微分積分」など目にすることすら嫌だった数学におけるそれぞれの項目が西成先生の解説によってその全体像が嘘のようにはっきり把握することができるようになりました。

それは、西成先生が先に数学の学問としてのゴール(教科の目的)を私たちに見せたうえで、そこから逆算して数学全体を構成する要素としてそれぞれの項目を理解させてくれたからです。

具体的には数学は以下のような全体像を持っています。

①代数(algebra) ②解析(analysis)  ③幾何(geometry)

ここで、それぞれに中学数学と高校数学の項目を当てはめてみます。

①代数(algebra) 中学数学は「数と式:二次方程式」そして、高校数学は「データの取扱い:数列の計算・順列と組合せ・分散と標準偏差」

②解析(analysis)   中学数学は「グラフや関数:二次関数」そして、高校数学は「4つの関数:二次関数・指数関数・対数関数・三角関数および微分積分」

③幾何(geometry) 中学数学は「図形:ピタゴラスの定理」そして、高校数学は「ピタゴラスの定義の一般化:余弦定理の証明及びベクトル」

このようにまずは全体を示したうえで、具体的な項目の説明に入っていくのです。

ここで私は個人的にかなり衝撃的なことに気づいてしまいました。

私が高校生の時にも数学の教科としての分類は、今と同様の「数学Ⅰ・A」「数学Ⅱ・B」「数学Ⅲ・C」などといった分類になっていたはずですが、西成先生はこの教科書の分類を「(この意味不明の分類は)完全に無視します」と言ってのけて、上記のような分類を示してくれたのです。

そういえば、私が中学生の時、先輩の数学の教科書にはこのような意味不明タイトルではなく、本書で西成先生が示していた分類のようなタイトルがついていたような記憶がかすかにありました。

そこで調べてみましたら、1985年~1993年までは「代数・幾何」「基礎解析」という名称を使っており、教育指導要領の改定によって1994年から「数学Ⅰ・A」「数学Ⅱ・B」「数学Ⅲ・C」に名称変更されていたということが分かりました。

つまり、私たちは「この意味不明の分類」の第一期生だったということです。(笑)

当時の数学の先生には、西成先生のように「文科省の名称変更は明らかに改悪である」という皮肉の一つでも言ってくれていたら私の数学への向き合い方も少しは積極的になっていたかもしれないのに、と責任転嫁してみたくもなります。

とはいえ、本書で展開される西成先生の解説は、このゴール(数学の目的)の明快な見せ方とともに、それぞれの項目と実際の私たちの生活との関連性を実に具体的に示してくれており、数学に向き合う積極性がみるみる膨れ上がっていくのを感じながら、あっという間に読破してしまいました。

すかさず、前著の「中学数学版」もアマゾンで購入し、本書と併せてうちの子供たちに勧めることにしました。

 

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