「なりたい自分」に10倍速で到達する方法
2016年7月29日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回、ソフトバンクの英半導体大手のARM買収のニュースに関連して、孫正義社長が身を置く資本主義という仕組みで動く経済界と民主主義という仕組みで動く政治の世界との比較をすることで、両者の根本的な違いについて考えてみました。
今回は、あまりにもすさまじい孫社長のパフォーマンスの「秘訣」を詳しく見てみたい気持ちになりまして、ソフトバンクにおいて孫社長のかばん持ちを長く勤められた元ソフトバンク社長室長の三木雄信氏の著書、「孫正義社長に学んだ『10倍速』目標達成術」を読んでみましたので、その中に書かれている「秘訣」をご紹介いたします。
本書には、いくつか「秘訣」がご紹介されていますが、その中で私が特に印象的だと思ったものは「わらしべ戦略」というものです。
これは、「一見するとあまり価値のないようなもの」から初めて、何かと交換する度にどんどんその価値を大きくし、最終的には本当に欲しいものを手に入れる戦略です。
孫社長の場合、「通信業界でナンバーワンになる」という目標を設定し、まだ何もない中で初めに目をつけた「一見するとあまり価値のないようなもの」は、ADSL事業でした。
ADSL事業は、そもそも「儲からない」上に「手間のかかる」誰も手を付けたがらない事業でした。なぜなら、この事業に参入するには、NTTの各種設備を借りなくてはならず、またそれでは足りない分を自己負担で確保しなければならなかったからです。
しかも、無事それらが確保できたとしても、実際に開通させるためには、各ユーザーごとにNTTの承認をとり工事を依頼しなければなりませんでしたし、ISDNを使っている場合には、いったん電話回線に戻してもらってから、改めて申し込むという二度手間、三度手間を覚悟しなければなりませんでした。
ですから、当時ソフトバンク以外の会社はこんな事業に目もくれませんでした。
しかし、孫社長率いるソフトバンクは、これを圧倒的な低価格で、しかも大々的なキャンペーンを張ることによって、一気に500万人という加入者を得ることによって、「一定の価値はある」事業にしてしまいました。当時のYAHOO!BBの街頭キャンペーンを覚えている方も多いかと思います。
しかし、これだけでは、あくまで「一定の価値」止まりです。
次に孫社長は、日本テレコムという固定電話業者に、ソフトバンクのIP電話ユーザーと日本テレコムの固定電話のユーザーとが融合すれば、圧倒的に大きな電話サービスが誕生し、シナジーを生むことができると持ちかけることにより、日本テレコムをその気にさせることに成功しました。
この買収によって、ソフトバンクは一気に1000万人という通信サービス事業者となり、この「一定の価値はある」事業を「かなりの価値がある」事業に変換しました。
ADSL事業だけで考えれば、所詮「わら」だったものが、これによって、みかん、いや馬に変わりました。
そして、これらの実績を積んだことによって、金融機関の信頼を得て、1兆円を超える巨額の融資をうけることに成功し、通信事業者としての最終章である携帯電話事業への参入についても、ボーダフォンを買収することで可能となったのです。
これで見事、馬が豪邸に変わりました。
だれもが、「儲からない」と思って手を出さないものでも、孫社長の頭の中では、このわらしべ長者のストーリーが明確にビジョンとして存在し、それらを少しずつ形にして、理解者、協力者を増やして、最終的に自分の設定したゴールへと導いていきました。
もうこれは、見事としか言いようがありません。
翻って、政治の世界の問題に目をやってみると、世界で最も少子高齢化の進んだ中で1000兆円を超える借金を抱える日本という国を立て直すなどと言うことは、本来であれば恐ろしくて誰も手を出すことができないというのが本来あるべき姿なはずです。
にもかかわらず、こちらの世界では相も変わらず、「なぜこの人が?」と思われるような人が平気で立候補し、そのうちの少なくない候補が当選してしまいます。もちろん、投票している有権者も端からそんなことはその人にできるわけがないと思いながら、選択肢がないばかりに投票してしまうことを繰り返しています。
当然にしてその結果は毎度同じです。
こんなこと言っても、詮無い話ではありますが、孫社長のような誰もが手を出さない「わらしべストーリー」を実現させてしまうような人材が政治の世界にいたら日本人はどれだけ幸せだろうかと思ってしまいます。