エグゼクティブは美術館に集う
2016年1月24日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
海外、特に欧米に行って、「やはり彼らにはかなわないな~」と強く思うのは、美術館と図書館に足を踏み入れた時です。いや、踏み入れる前の建物からして、そう思います。
あれだけのものを無料で開放し、しかも時間も日本と比べ物にならないほど活用に便利なように設定されていることに驚きます。
教養と図書館、教養と美術の関係が密接であると言われて、前者はなんとなく直感的に理解ができますが、本書「エグゼクティブは美術館に集う」は後者についても腹落的に理解させてくれる良書でした。
何故、欧米が、この一見すると人間の生産性に関連性のなさそうなものにあそこまでのコストをかけて維持しようとしているのかということが分かったような気持ちになることができます。
本書では様々な観点からその関連性について、解説をしてくれていますが、ここでは生産性の源である「脳」と「美術」とのつながりについて分かりやすく説明している部分を引用してみます。
「『突然昔住んでいた家までの地図を描いてください』と言われても、無理だが、その駅に降りたったら見慣れた看板、歩く時間と距離の感覚、疲れ具合など、自らの感覚を総動員して、言い換えれば、周囲の環境と脳が相互連携しながら、間違いなく家にたどり着くことができるでしょう。』つまり、記憶は、脳に閉じ込められているのではなく、環境とともにあるという性質を持つのです。」
続けて、
「美術作品、特に抽象表現の多い作品は鑑賞者の個人的な体験や感覚に反応して様々な記憶とつながりやすく、(中略)本来的に脳と美術作品の『間』に言葉や記憶、コミュニケーションが成立すると考えられます。脳について、現代の科学はまだその本質を解明しているとは言えませんが、多様な意味を持ち、すべての感覚を刺激する美術品との相性は恐ろしく良いのでしょう。」
日本では、単なるセレブの趣味の範疇と捉えられてしまいがちな美術鑑賞も、このように、その本質的な価値を理解した上で、もっと戦略的に活用すれば、私たち日本人の国際競争力を格段に高めることに役立つツールになるのではないかと思いました。
その理解に基づいて、百数十年以上も前から戦略的に活用している欧米との差は、歴然としたものがあるとは思いますが、やらないよりはやった方が良いことは間違いありません。