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キッシンジャーの外交感覚

2023年12月2日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2023年11月29日)、アメリカの歴史の中でおそらくもっとも有名な国務長官であったヘンリー・キッシンジャー氏が100歳で亡くなりました。

彼のことを知るためにいい記事がないかと探したところこのようなウェブ記事を見つけましたので以下、興味深い部分を要約引用します。

「米中接近は1971年からだ。共和党のリチャード・ニクソン大統領が中国との国交回復を目指した。当時のアメリカはヴェトナム戦争の泥沼に足をとられ、何とかしようとしていた。そこで目を向けたのが中国だった。国際的に孤立していた中国を国際社会に引き込み、プレイヤーとして機能させるということが目的だった。そこで白羽の矢を立てたのがハーヴァード大学教授だったヘンリー・キッシンジャーだった。しかし、ニクソンとキッシンジャーは同床異夢というか、中国観に違いがあった。ニクソンは中国を変革させよう、西側に対する敵対を止めさせようという考えだった。キッシンジャーは中国の考えや国内体制を変えることなしに、利益をもたらすことで国際社会に参加させようという考えだった。それによって、中国は伝統文化を忌避し反西側の危険な考えを変えることなしに国際社会に参加し、強大な国になってしまった。これはキッシンジャーの考えが足りなかったからだという批判が強まっている。それではニクソンが考えていたように、アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変える、考えを変える、ということをやっていたらどうだっただろうか。中国国内で大きな分裂と争いが起きていた可能性は高い。そのような不安定な中国がアメリカの利益となったかどうか、疑問だ。また、日本にとって不安定な中国は利益とはならなかっただろう。中国の言い分を聞き、なだめすかしながら、国際社会に順応させるということをキッシンジャーはやった。これは大変な手綱さばきであったと思う。中国の経済力をここまでにしたのは、アメリカが中国産品の輸入を拡大したからだ。自業自得ということになる。」

この記事をざっと読んだだけで、アメリカを中心とする欧米のご都合主義というか、自らの世界の見方が絶対正義であると信じて疑わない姿勢の存在にハッと気づかされます。

このことについては一年ほど前に、書いたノームチョムスキーの「壊れゆく世界の標」に関する記事でも触れたところです。

まさしく、これまでイギリス・アメリカを中心とする欧米社会がやってきたことは、記事中のニクソンの「アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変える」という考えそのものでした。(キッシンジャーの存在はその例外中の例外ということになりますでしょうか)

それによって、世界中にどれほどの悲劇とそれによって引き起こされた解決不可能な国際問題があるか知れないわけですが、当の欧米社会はそれを反省することはありません。

まさにこの記事の中に書かれている「中国国内で大きな分裂と争いが起きていた可能性は高い。そのような不安定な中国がアメリカの利益となったかどうか、疑問だ。」ということを実際に何度も繰り返しているのですから。

キッシンジャーであってもそれはあくまでも「ヴェトナム戦争の泥沼に足をとられ、何とかしよう」というアメリカのご都合主義によって中国を国際社会に参加させようとしたわけですが、彼は「中国の体制を変える」などというおこがましさだけは少なくとも封印していたということです。

ちょうど「キッシンジャー死去」のニュースが報じられた12/1の読売新聞の朝刊の編集手帳に彼の中国観が次のように表現されていました。

「キッシンジャーは中国政治についても早くから見抜いていた。共産主義は表面的なもので本質は皇帝政治だと。中華思想の伝統と近代以降の屈辱感に動かされるだろうと。」

これまた天下の読売新聞もアメリカのものの見方そのものといった感じですが、でもここで重要なのは、キッシンジャーがそう見抜きながらも、それはあくまでよそ様の内情の話であって、「アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変え」ていいものではないと理解していたということだと思います。

今回の彼の死去で、アメリカからまた一人多面的に世界を見る人がいなくなってしまいました。