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壊れゆく世界の標

2022年12月28日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ノーム・チョムスキー氏については「言語学」を博物学から自然科学の領域に高めた「世界最高の論客」として今まで「日本人と英語」ブログにて彼の独創的な学説である「生成文法」に関して何度も取り上げてきましたが、この代表ブログでは少し前に彼が「ウクライナ戦争」に関して「政治的」な発言をされたことについて取り上げました。

今回も、彼の「政治的」な主張をまとめた書籍である「壊れゆく世界の標」をご紹介します。

本書は「世界最高の論客」ノーム・チョムスキーに対してインタビューする形で、パンデミックから気候変動、格差と福祉、資本主義の展望など政治的なテーマに関する彼の思索を引き出し、まとめたものです。

インタビューアーのデイヴィッド・バーサミアンは、アメリカのメインストリーム・メディアには取り上げられない反体制的な見解や批判を、ラジオ番組を通じて積極的に一般の人々に提供することをライフワークとしてきたジャーナリストです。

彼の質問の仕方は非常に先鋭的なもので、彼だからこそチョムスキーからそこまでの本音ベースの鋭い発言を引き出すことができたのかもしれません。

前回の「ウクライナ戦争」に関する記事の中でも、チョムスキーは、アメリカ(西側諸国)が100%正義でロシアが100%悪であるという一方的な西側の視点が大勢を占める中で、アメリカの自国中心・ご都合主義に対する凄まじい批判を繰り広げていたわけですが、本書では「ウクライナ戦争」以外の様々なテーマにおいてアメリカを中心とする西側諸国に反省を促すものでした。

本書における数あるチョムスキーの本音ベースの鋭い発言の中で最も印象深かったものを以下に引用します。

「コロナ禍における国際社会では、真の国際主義と呼べる精神を発揮した国がある。EUの中で最も裕福な国であるドイツは、誰の助けも借りずにパンデミックを制御しているが、数キロ南にあるイタリア北部が窮地に陥った時、救いの手を差し伸べただろうか?いいや。しかし、ある国が救済に向かった。キューバだ。60年間アメリカの経済制裁に苦しんできたキューバがだ。キューバは世界中のコロナの最前線に医師団を送り、権力を持つ裕福な国々がやろうとしないことを補っている。これは目新しいことではない。キューバは長いことその種の活動を続けてきたが、我々は今まで、気づかぬよう仕向けられてきた。(アメリカを中心とする西側諸国の政府は)キューバが人助けをしていると一般市民に知られたくないのだよ。我々はキューバ人のこの行動から学ぶべきだと思う。」

私たち西側諸国の国民はロシアや中国そして北朝鮮などの国々の情報統制を批判する一方で、自国陣営の情報の透明性の確保については信じて疑わないわけですが、本書において本音ベースの視点をこれでもかと見せられてしまうとそんな自信は簡単に吹き飛んでしまいます。

これを見せつけてくれているのが「世界最高の論客」ノーム・チョムスキーだからこそなおさらです。

 

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