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ファストファッションのファストって何?

2020年3月16日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2020年1月28日)、私が尊敬する経営学者である一橋大学の楠木建教授の講演を聴く機会がありまして、その中でのなされた非常に興味深い「たとえ話」について紹介したいと思います。

私は、「ファストファッション」の代表的な企業を二つあげるとすれば、「ZARA」と「ユニクロ」を思い浮かべていたのですが、この話を聞いて、実はその理解は全くの誤解であったことに気づかされてとても恥ずかしい思いをしました。

楠木教授はまず、一般的なファッション業界を「競馬」に喩えて次のように説明されました。

「ファッション業界は、シーズンが始まる前にどのようなものが流行るのかを予想して、それぞれが企画、発注、在庫、販売という流れをシーズンが始まるまでにとっていきます。『競馬』に喩えれば、馬がパドックにいる段階で自分がどの馬券を買うのか決める、すなわち一般的にはこのビジネスの本質は『キャンブル』に近いものです。ですから、自分が決めたものがトレンドから外れれば、大きな在庫を抱えることになり、当たれば大儲けができるビジネスというわけです。」

普通に考えれば、「トレンド」はそのシーズンが始まってから固まっていくわけで、シーズン前の段階では神様しか知りえないわけで、どの会社もこの「博打」を避けることができないというのが常識でした。

そして、続けます。

「しかし、世の中には奇特な人がいるもので、この常識を覆してしまった人がいたのです。ZARAの創業者であるスペインのアマンシオ・オルテガは、次のように考えました。出走前のパドックの段階で予測するから、『博打』になってしまうわけで、レースの大勢が決まる第三コーナーを回るくらいの段階で、『馬券』を買うことができれば非常に成功確率の高いビジネスになるじゃないか!として、ファッショントレンドがある程度固まった段階から、企画、発注、在庫、販売を数週間という短期間で確立する方法を考えたというわけです。だから、『ファスト(速い)』ファッションなわけです。」

なるほど!と思ったわけですが、同時に、「どうやって?」という疑問も浮かんでくるわけで、このことについては次のように解説されました。

「その答えが、『SPA(speciality store retailer of private label apparel)』という、ファッション業界でそれまで一般的だった「企画、発注、在庫、販売」を分離していたものを一社が丸抱えして、一気通貫して行える仕組みです。」

そして、次の説明で私は自分の無知ぶりに愕然とさせられました。というか、言葉をビジネスにしている人間としてとても恥ずかしくなってしまいました。

「では、ユニクロはどうか。これをよく観てみると、『SPA』という仕組みをとっているという点ではZARAと同じですが、ビジネスの狙いどころが実は全く逆の発想であることが分かります。ユニクロは、牧場から目をつけ、どの馬が優秀か、そして怪我もせず、長期にわたって勝ち続けることができるかを見定めたうえで、『馬券』を買っているのです。つまり、誰もがベーシックとしてトレンドに関係なく買いたくなるものを、費用対効果を抜群に高めて大量にさばくというものです。ですから、ユニクロは超very『スロー』ファッションだということになります。」

「ZARA」と「ユニクロ」は、そもそも「SPA」という概念でくくられるわけであって、「ファストファッション」という概念は全く別物だということです。

たとえ話が上手な人は頭のいい人だと良く言いますが、このたとえ話は本当に天下一品だと思いました。と同時に、今まで以上に、「言葉」を丁寧に使っていこうと改めて決心させられました。

 

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