世界は経営でできている
2024年3月1日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
本書「世界は経営でできている」は、非常にユニークなバックグラウンドを持つ若き経営学者である岩尾俊兵氏によって書かれたものです。
どのくらいユニークかというと、父の会社の倒産と借金によって高校進学を断念して中卒自衛官としてキャリアをスタートさせ、コンビニや工事現場などでの労働に従事しながら勉学に励み、大検経由で慶応大学卒業、その後東京大学大学院在学中に学生ベンチャーを立ち上げクラウド型電子カルテ事業を経験、現在慶応大学商学部准教授を務めるというくらいにです。
そんなユニークな経営学者が「経営」について書いた本書は本当にユニークなものでした。
というのも、人間の人生に密着した15のテーマ(貧乏・家庭・恋愛・勉強・虚栄・心配・就活・仕事・怒り・健康・孤独・老後・芸術・科学・歴史)の全てにおいてどれだけ「経営」が大切かということを、これでもかという「皮肉」と「諧謔(この言葉が戯れ・滑稽さという意味があることを本書で知りました)」たっぷりの逆説的手法によって説いてくれています。
これを読むと、私たちの「人生」の目的を果たすためには、本来は完全に「経営」なくして成り立たないはずなのにもかかわらず、私たちがその「経営」の本質を理解していないばかりに、ことごとく「経営」とは真逆の行為を行うことで目的達成を果たせない状況にいることをこれでもかと見せつけられることになるのです。
本書において著者は、「経営」を以下のように定義しています。
「価値創造(他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的に向かい中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して豊かな共同体を作り上げること」
この価値創造の部分を以下のようにもう少し突っ込んで説明しています。
「『あらゆる価値は創造できる』という視点を持たないと例えば金銭のような単なる手段であるはずのものが希少に思えてしまい、手段に振り回されてしまう。それがあたかも目的かのように。そうなると、有限な価値を巧妙に奪い合うために狡知をめぐらすことこそが『経営』であるかのように誤解してしまう。」
それを納得感をもって理解できる一節を15のうちの一つ「就活」のテーマから引用したいと思います。
「たとえ大金を得て消費ができても、モノやサービスをじっくりと味わって満足を得るという時間と精神の余裕がなければ意味がない。幸福を得るための最初の制約は予算(お金)、この制約を超えると次に時間的制約、そして身体的制約(心身の健康)が幸福への枷となる。だから、合理的に強欲を追求していけば、ある程度のお金を稼いだところでお金よりも時間と健康が大事になる。さらには社会貢献などの精神的な満足が大事になるはずなのである。」
もう、100%同意するしかない結論なのですが、15のテーマごとに「目的と手段のミスマッチ」を目の当たりにすると、人間はなんと「似非経営」に振り回されやすい本性を持っているかを思い知らされることになります。