付加価値のつくりかた
2023年5月13日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回の「シン・営業力」に続き、「キーエンス研究」の二冊目として「付加価値のつくりかた」をご紹介します。
著者である田尻望氏は、2008年に入社し、コンサルティングエンジニア(技術営業)として、技術支援、重要顧客を担当。前回の天野氏がキーエンスの高度成長のフェーズで活躍されたのに対し、キーエンスが名実ともに超優良企業として安定期を迎えた中で活躍されたのち、独立。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための「付加価値」づくりの視点からコンサルティングを提供されている方です。
キーエンスという会社の圧倒的な高収益性の秘密を、前回は「営業」の視点から見ましたが、今回は「付加価値」という視点から見ていきたいと思います。
まず、この「付加価値」という言葉ですが、そもそも「価値」と何が違うのか、その関係性を明らかにするところから見ていきたいと思います。
著者は価値と付加価値にについて、「価値とは顧客が感じる(決める)ものである」と「付加価値は顧客のニーズを叶えるもの」という前提を置いています。
この前提だけだと何を言っているのか良く分からなかったのですが、読み進めていくうちに次のような理解ができるようになりました。
この前提からすると、顧客企業が製品を買った時点でそれを認めているわけですから仕入れなどの原価(外部購入価値)を含めた価格全体が「価値」ということになります。
そして、その価格全体と原価の差額(利益)にあたるものが、それを買った顧客のニーズを叶えるために直接的に機能するものということになるため「付加価値」ということになります。
つまり、「付加価値」とは企業が「顧客のニーズ(困りごとの解決)を叶える」ことで初めて生み出すことができるものです。
とまあ、ここまでは一応どの企業でもその深さに違いはあっても、当然のこととして認識していることではありますが、同じ認識に立ちながらもキーエンスが他社を寄せ付けない圧倒的な成果を出している理由はどこにあるというのでしょうか。
それが「ニーズ探索の適切さと深さ」だと著者は言います。
まず、「適切さ」ですが、一般の企業ですととかく「顧客のニーズ(困りごとの解決)」を超えた性能を追求してしまいがちですがこれは「付加価値」ではなく「ムダ」であるという認識を持つべきです。
例えば、携帯電話をどこまでも薄くしてしまうことなどがそれにあたりますが、そこには「顧客のニーズ」は存在しておらず、そのためにコストをかけることは無駄以外の何物でもありませんから。
次に「深さ」についてですが、ニーズには顕在ニーズと潜在ニーズがあり、前者は顧客がすでに認識しており、簡単な質問で答えてくれるものである一方で、後者は、提供する側が顧客自身が気づいていない部分までも、顧客との徹底的なコミュニケーションによって見つけ出さねばならないものになります。
この顕在・潜在両ニーズの把握は当然どちらも大切ですが、上記の「差」を生み出すのに貢献するのは「潜在ニーズ」です。
なぜなら、顕在ニーズのみの把握だと他社も同じように探索しているわけですので、次第に差別化が難しくなり、結果的に価格競争が起き、「付加価値」がどんどん少なくなってしまうからです。
言ってみれば、「付加価値(あなたの役に立ちますよ)戦略」と「差別化(他社とは違いますよ)戦略」の両立を「潜在ニーズの探索」とそれの「製造へフィードバック」を徹底的に構造化(仕組化)することで、他社が絶対にまねのできない成果を出し続けているのがキーエンスという会社ということになります。