僕らとビジネスの話をしよう
2024年10月7日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
今回ご紹介するのは、このブログではおなじみの堀江貴文氏(ホリエモン)が各業界で実績を残したプロフェッショナルを招いてトークをするNewspicksの動画コンテンツである「HORIE ONE」から、「新時代の働き方」という視点でピックアップしたものを書籍化した「僕らとビジネスの話をしよう」です。
今までも、堀江氏の書籍についてはこのブログにて何度も取り上げてきました。
そして、印象としてはそのどれも、世の中の一般的な常識に対して「反対」を行く、悪く言えば世の中を「斜め」に見るような考え方でありながら、結果を出す適切な解決方法を提示するものでした。
当然ですが、そのようなものの見方こそがホリエモンの魅力だと私を含めた彼のコアな読者には思われているはずです。
ところが、本書は「結果を出す適切な解決方法」でありながら、世の中を「まっすぐ」にみるような考え方を提示されている、もしくは対談相手のそのような考え方に共感をしてしているものが比較的多く、ホリエモンの考え方に関してかなり意外な印象を受けました。
具体的にいくつかご紹介しましょう。
一つ目として、元テレビ東京で現在はABEMAの映像ディレクターでありながら、自らも映像制作会社「tonari」を立ち上げてビジネスオーナーとしても活躍されている高橋弘樹氏が「働くとはどういう意味をもつのか?」という質問に対する以下のように答えています。
「一つはお金を使うということ。大事なのは『お金を稼ぐ』じゃなくて、お金をいかに使えるかということ。これは僕の仮説なんですけど、人間ってお金を使うときに幸せを感じるんですよ。だから、会社でいかにお金を使えるかということが大事になってきます。例えば、テレビ番組を作るときには年間で何億円もの予算を使うことができます。これは子供のころに1000円もらってプラモデルを買って作っていたのと同じで、大人になって5億円のプラモデルを買えるようなものです。」
この意見に対して、ホリエモンは以下のように返しています。
「僕は逆にそれしかやってこなかった。ロケットを作ったり、ラジオ局を買ったり。純粋に儲けのことだけ考えると、同じことをずっと続けていたほうが稼げるんですよ。だからお金をもう稼ぐ時代じゃなくて使う時代なんです。」
このやり取りを受けて私は、それならばなぜホリエモンは、何もしなくても十分に儲かっている楽天が、楽天モバイルで大きな損失を出していることに対して、これでもかというくらいに批判をしているという事実と整合性が取れないと思えてしまいます。(つまり、あれはビジネス批判ではなく、個人的な好き嫌いの問題なのかもしれません。)
二つ目は、かつてこのブログでもご紹介した「渋滞学」で有名な東京大学の西成活裕教授に対するホリエモンの「高速道路も流入と退出が同じようになるように交通工学の中できちんと設計されているのにもかかわらず、渋滞はなぜなくならないのか?」という質問に対して、西成教授は以下のように答えています。
「鋭いご指摘です。それはなぜかと言うと、首都高を作った時の想定と今の交通量が100倍違うからです。交通量が今の1/100だったら渋滞は起きないのです。これは組織でも個人でも同じで、適切な仕事の量があって、ある臨界を超えると急に仕事が渋滞し始めます。詰め込まず、余裕を持ったほうが生産性が高くなることが様々な企業で示されています。この臨界は企業によって異なりますが、最大できる仕事量の約7割くらいがいい、ということが分かっています。」
この西成教授の発言に対してホリエモンはこう返しています。
「そうですねよね。でも、未来予測って難しいのにみんな未来予測をしますよね。あれは何でですかね?」
このように、ホリエモンは話をすぐにそらしてしまっていますが、それでも「仕事量は7割でもいい」という西成教授のコメントに対して「そうですよね。」と肯定的に反応しているのポイントです。
あらゆることに「ムダ(非効率性)」の存在を指摘して、それを解消することで利潤につなげようとするホリエモンのイメージが強いですが、意外にもそれはあくまでも「効率性」に限定されているわけであって、それは決して絶対的な「効果性」を追求するモーレツ企業家とは異なる考え方であることが感じ取れます。
最後に、彼の企業経営に対するものの見方が非常によく分かるやり取りを引用して終わりにしたいと思います。
「将棋のような『完全情報ゲーム』と麻雀のような『不完全情報ゲーム』とがありますが、前者は実力がある人が勝ちますけど、後者は実力のある人でも短期的には負けたりします。でも、短期的に負けても気にしないでいれば、長期的には実力がある人が勝つ。麻雀も長期的にみると実力のある人の勝率が高いんですよ。ちなみに、麻雀が強い人って経営力もあったりします。不完全情報ゲームであることをある程度受け入れながら進めることができる。簡単に言うと、短期的に負けてもイライラしないということです。」
こちらについては、おそらくサイバーエージェントの藤田社長を意識したコメントなのではないかと思いますので一応、こちらの記事もリンクしておきます。