全員経営の強み
2017年11月8日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
現代日本は、経済の成熟化が進み、国家レベル、社会レベル、企業レベルとあらゆる段階で柔軟性、迅速性、俊敏性に乏しくなりがちです。そんな日本において、いま必要とされる組織の形について非常に分かりやすく書かれた本を読みました。
本書の主張を一言でいえば、上記のような現状を打破するためには、あらゆる組織が、戦力の大きさで競合を圧倒する消耗戦から、一人一人が「知的機動力」を発揮する機動戦への転換を図ることが必要であり、そのために必要なことは、この「全員経営」を実現できる仕組みを作ることだということです。
そのことについて、幾つもの成功事例を取り上げて解説を加えています。
本書の中に、以下のような記述がありました。
「商品の『モノ』としての価値は工場で生まれますが、サービスは『コト』の価値であり、使われる現場におけるモノと顧客との関係性の中で生まれます。顧客が使えば使うほど情報も集まり、サービスの質が高まる。ここに、作り手と使い手が一緒になって価値を創出するという共創の場としての知のエコシステムが生まれ、他社は入り込めなくなる。」
価格の勝負に最も適した形は、消耗戦にこたえられるような強大な組織を作ることです。しかし、消耗戦は、最終的には泥仕合となります。ですから、長期的に見たら、安定的な利益を創出は不可能です。
それに対して、作り手と使い手の共創の中で作り出したエコシステムは、他社が入り込めなくなる理想的な市場となります。
このようなエコシステムを作るためには、まず組織を構成する一人一人が顧客との関係性を築き、そこで得られた情報を組織で共有する中で得られる「気づき」が重要になります。
そして、この「気づき」を柔軟に、迅速に、そして俊敏に「仕組み」に変える必要があるのです。
この「気づき」は、もちろん「顧客との関係性」を持つ全ての構成員によってなされる可能性があるわけで、それは現場の人間からトップに至るまですべてです。本書の中には、セブンイレブンの事例において、たまたまトップである鈴木敏文氏の「気づき」が、全体に共有された以下のような例があげられており印象的でした。
「私は不況下でも、価格の安さだけでなく、質の良さを求める顧客が増えていることを見抜いていました。質の追求より、低価格の商品を作る方が実は容易で、仮に6割の顧客が低価格を求めているとすれば、売り手の大半はそちらを選ぶでしょう。ただ、たちまち飽和状態になり、価格競争に陥る。一方、質を求める顧客は4割でも、売り手としてニーズに応えたら、圧倒的な支持を得られる。そして、今まで6割の中にいた顧客も4割の方に映ってくる。質の追求は容易ではなくても、我々の進む道は明らかでした。」
このようなことは、決して経営学の教科書に書いてあるものではありません。まさに、商品の作り手と使い手の関係性の中で、感覚的に得られる「気づき」でしかないわけです。
そして、このような「気づき」はたまたまこのケースではトップによってなされたものですが、必ずしも毎度毎度トップから出てくるようなものではありません。
だからこそ、「全員経営」を実現できる仕組み、すなわち、組織の中の誰による「気づき」であってもそれを全体に共有し、価値の創造につなげていく仕組みを作ることが重要なのだということを痛感しました。