決断の裏側
2011年8月21日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
数日前の読売新聞(写真とは別)のニュースサイトにて以下のような記事が出ていました。
そのまま転記します。
『東京電力福島第一原子力発電所の事故直後、米政府が、東京在住の米国人9万人全員を避難させる案を検討していたことが分かった。元米国務省日本部長のケビン・メア氏が、19日に出版する「決断できない日本」(文春新書)で明らかにした。9万人避難が実行されていれば、他国の政府対応はもとより、日本人にもパニックを引き起こしかねないところだった。メア氏は震災直後、国務省内の特別作業班で日本側との調整にあたり、著書にその内幕をつづった。米国人の避難が提起されたのは、3月16日未明(現地時間)の会議だった。米側は無人偵察機グローバルホークの情報から原子炉の温度が異常に高いことを把握し、「燃料が既に溶融している」と判断。菅政権が対応を東電任せにしているとみて、「不信感は強烈」な状況だったという。米国人の避難を求めた政府高官に対し、メア氏らは「日米同盟が大きく揺らぐ事態になる」と反論し、実行に移さなかったとしている。』
この記事を読んで、私は、とても複雑な気持ちになりました。
まずは、自国政府への不信感のよりいっそうの増大。
それから、当然ではありますが同盟国の同盟への執心は、あくまでもその国民の安全に完全に劣後すること(たまたま、今回は実行に移されなかったが、その可能性は十分にあったということ)です。
このことについて、日本国民の誰がアメリカ政府を責められるでしょうか。
いや、せめられるはずもありません。
それでも、私は複雑な気持ちになってしまいました。
この気持ちの原因は何なのでしょう?
アメリカという国に対する過度な期待、それにより生じる甘え、それらが裏切られたことによる悲しさ、かも知れません。
日本政府でよく使われる『パニックになるから正確な情報は出さなかった』というコメントがありますが、この記事を読むと、そのまったく逆の状況が生じるところだったことがよく分かります。
日本の「情報への不誠実さ」に対するアメリカの不信感は、民間、政府間を問わず戦後築きあげてきた相互の信頼を一気に吹き飛ばしてしまうような決断までもあと一歩でしてしまうところまで募っていたということになります。
実は、この情報は当時、ランゲッジ・ヴィレッジの講師の間でも飛び交っていました。
私たちは「そんなはずはない」として、沈静化に努めましたが、何人かは帰国してしまうという事態にもなりました。(大部分の講師は私たちを信じて、残ってくれて運営への支障もほとんどなく乗り切れましたが。)
聞くところによると、このような情報が日本にいる外国人の間に飛び交ったことで非常に多くの日本で働く外国人の無断帰国や緊急帰国が発生し、顧客との信頼を壊してしまったという企業が多発したようです。
もし、記事の決断が実際に実行に移されたら、日本経済は現在の大変だといっている状態など比較にならないほどにダメージを受けたことでしょう。
そして、それらの被害をこうむった日本の経済人の外国人、外国政府への恨みはいかほどになったかと思うと、胸をなでおろします。
翻って考えますと、この問題の難しさは次のことによく現れると思います。
たとえば、エジプトで、たとえばコロンビアで・・・世界のどこかでテロや災害が起こって、まだ情報がほとんど出ていない状況のとき、日本を含めた世界の国々はどのような対応をとるでしょうか。
まず、自国民の安全の確保、できるだけ迅速な帰国。
だと思います。
それらのニュースを何度も見てきた私たちは、今までその裏で信頼を破壊せざるを得ないその国の企業や人々の気持ちを考えたことがあるでしょうか?
今回、図らずも、もっとも安全と思われていた日本という国で、このようなことが起こったことで、ひとつの決断はさまざまな「よい」「悪い」を包含しながらも、なされなければならないという恐ろしさを感じさせられました。