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言語化力

2020年7月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

私は仕事柄、言語一般に対して強い興味を持っています。

そして、その興味を満足させてくれる魅力的なタイトルの本を見つけて読んでみました。

その名も「言語化力」です。

著者は博報堂出身の新進気鋭のクリエイター三浦崇宏氏です。

彼は「言葉」を人生を生き抜く上での「最強の武器」と定義した上で、その武器の磨き方の指南書として本書を書かれています。

そもそも著者は「言葉」を「武器」ととらえる以前に私たち人間すべてに平等に与えられた「権利」であるととらえている節があります。

その前提となる考え方が分かる一節を以下に引用します。

「そもそも発言する意味がない人間などいないのだ。広告会社を例にとると、昔であれば、CMを100本撮った人は10本撮った人よりも経験が豊富なので発言権が強いことに意味があった。でも今はその常識、前例をたくさん持っていることよりも、新しい時代の変化について敏感に身体感覚で察知していることの方がよっぽど大事だ。『世代が違う』ということは単なる年功序列のヒエラルキーを指し示すことではない。それは進化し、変化する社会常識の中で、『生きてきた時代背景が違う』というだけのことになる。20代の新人は『2010年代を生きてきたエキスパート』なのである。誰もが違う人生を生きている以上、発言できない理由などない。昔の偉人の言葉を借りるならば、『あなたじゃない誰かはそこにはいなかったんだ。何かを言える権利があるのは、その場にいることができた人たちだけです』。」

すべての人間には「権利」があり、その権利行使としての「発言」が価値をもつからこそ、「武器」になるのです。

そして、だからこそ著者は、その発言を作り上げる際に必要となる「言語化」の力を最大限に高めるためのトレーニングの重要性を訴えているわけです。

その上で、あらゆる物事を「言語化」できるようにするためのプロセスを4つの段階に分けて明示されており、それらを意識してトレーニングをすれば、かなり具体的な成果を得られる実感を得ました。

その4つの段階とは、(0. スタンスを決める 1.  本質を掴む 2. 感情を見つめる 3. 言葉を整える)です。

ですが、今回私が書きたいのは、それらについての詳細ではなく、この4つの段階の中で最も印象的だった「スタンスを決める」という行為についてです。

以下にその該当部分を引用します。

「かつて、博報堂でマーケティングの仕事をしていた時、クライアントとクリエイターとの間で意見が食い違うことがあった。その際、若手の僕は判断に迷い、営業の先輩にどちらの考えを支持するべきか聞いてみた。その時、その先輩の回答はこうだった。『俺たちはクリエイターの側に立とう』。通常、営業はクライアントを何よりも優先するのが仕事であるはずと考えていたので、僕にとっては意外な回答だった。彼がそういう理由は『クライアントはその会社との取引がうまくいかなくても、同じ業種の別のクライアントを探せばいい。しかし、この広告の仕事をしている限り、重要なのはクリエイターだ。優秀なクリエイターと仕事をしていれば成果は出せる。ただ、優秀なクリエイターはあまりにも少ない。彼らから信頼されることが長期的には最も重要だよ』。重要なことは、僕たちができる精一杯のことはただ一つ、目の前に現れる無限の思考の分岐点で自分のスタンスを貫き続けることだ。」

まさに、このエピソード自体が、「言語化」は「最強の武器」であることの証拠のように私には思えました。

営業がお客さんよりもクリエイターを優先するという、常識では「ありえない」判断を正当化することは普通では考えられません。

それなのにもかかわらず、少なくとも私は、著者のこの言語化されたエピソードによって、その正当性を確実に理解することができ、彼の思考を支持する側に回ることができるようになったからです。

このことから、著者の明示したプロセスのうち、「0. スタンスを決める」さえできてしまえば、それ以降の「1.  本質を掴む 2. 感情を見つめる 3. 言葉を整える」は自動的にできてしまうと言っても過言ではないと思われました。

タイトル負けしない非常にいい本でした。

 

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