「派閥」の研究
2021年12月8日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回ご紹介した「『空気』の研究」に引き続き、山本七平氏の「研究」シリーズ第二弾として「『派閥』の研究」をご紹介したいと思います。
というのも、先の自民党総裁選では、国民的人気NO.1を誇る河野太郎氏が当初の予想に反して第一回目の投票から岸田文雄氏に敗れ、決選投票では圧倒的大差で敗北し、当初から言われていた「派閥の力学」の存在を見せつけられました。
このことから「派閥とは何か」に個人的興味をそそられ、読んでみることにしました。
本書は、故田中角栄元総理がロッキード事件で有罪とされた後も「闇将軍」と言われ絶大な権力を維持し続けることができたことの秘密こそが「派閥」の力だとして、その力の分析をしたものです。
前作同様、難解な語り口でありながらも深い考察によって納得度の高い理解を得られる内容となっており、「派閥」の概要を理解することができました。
まず、派閥とは何かを理解するためには、その存在目的ともいえる権力についての理解が不可欠です。
本書では、J・K・ガルブレイスの「個人の資質」「財力」そして「組織」の三つがそろわないと権力は成立しえないという権力の三源泉をあげ、そのことがよく分かるエピソードとして自民党の藤山愛一郎氏と田中角栄氏との対比を以下のように述べています。
「藤山コンツェルンに生まれ、若干44歳で日本商工会議所の会頭も務め『財力』も『資質』もあった藤山氏になくて角栄にあったものが『(裏)組織(を抑える力)』だ。地下茎組織である派閥をコントロールするためにはどこのボタンを押せばどう反応してどういう結果を生ずるかを完全に把握していなければならないからだ。というのも、欧米の組織はツリー(幹枝)型と言われ、日本の組織はリゾーム(根茎)型と言われる。前者だと職務単位ごとに権限がきちっと決まっていて、それが枝から幹に行くように整然とつながっている。後者はお互いの関係が根茎のように絡まりあっていて、みんなの顔を立てながら統合されていくような組織になっている。日本では建前上はあくまで欧米型になっているから内閣が(表の)組織だが、本音の部分では根茎型の裏組織である派閥によってそれが決定されているというわけだ。(一部加筆修正)」
すなわち、「派閥」がこれほどまでに力を持つ理由とは、三つの権力の源泉のうちのおそらく圧倒的に獲得するのが難しいであろう「(裏)組織(を抑える力)」を意味することだろうと思います。
実際、今回の総裁選やその後の組閣や党内人事を見た時に、その表と裏は全く逆転して、裏組織である「派閥」が見事にその権力の本質であることを見せつけられました。
田中角栄氏の時代ならともかく、現在進行形の政治、そして民間における組織に関しても少なくともこの日本においては、法律論を凌駕して、派閥の論理が優先されていることは紛れもない事実のようです。
本書が書かれてから30年以上が経ちますが、本書の指摘がそのまま当てはまるという事実を見せつけられ何とも言えない気持ちになりましたが、裏が表に変わるようなブレークスルーはこの日本ではまだまだ来そうにありません。