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続・the country of forgiveness

2022年5月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2022年5月9日)、フィリピンにおける大統領選の結果、フェルディナンド・マルコスJr.元上院議員(64)が圧勝したというニュースがありました。

日経新聞の記事を以下に要約します。

「開票率98%時点でマルコス氏が3107万票を得た。次点のレニー・ロブレド現副大統領(57)の1480万票の2倍以上となった。マルコス氏は6月30日に就任予定で任期は6年となる。実は、1986年にもこのエドサ通りには群衆が集まっていた。今回当選したマルコス氏の父親である元大統領が敷いた独裁政権を打倒するためだ。36年の時を経て『独裁者の息子』が選挙という民主的プロセスによって大統領に就任することになる。当時の独裁政権は1972年に戒厳令を布告し、人権侵害も起きた。人権保護団体アムネスティ・インターナショナルによると、72~81年にかけて7万人が投獄され、3万4000人が拷問、3200人以上が殺害された。そのような背景がありながらのこの結果となった理由は、フィリピンの有権者は若いということだ。人口約1億1000万人の平均年齢は25歳前後で、有権者のうち18~41歳の割合は50%を超える。独裁や86年の民主化革命を体験していない有権者は、マルコス氏に対してマイナスのイメージを持っていない。」

この記事では、「独裁者の息子」が民主的に大統領に選出された理由を、単に「フィリピンの有権者が若い」こと、すなわち実際に当時の悪政を体験していないことをあげていますが、私としてはそれだけではないように思っています。

もう一つ、フィリピンが「the country of forgiveness(許しの国)」であることも大きな理由ではないかと思うのです。

実は私はマルコス氏のお母さん(イメルダ・マルコス)に10年前に会ったことがあります。

と言っても、マニラの空港で偶然出会っただけですが。(笑)

私は今回のニュースを見てすぐに、10年前に「the country of forgiveness」という記事で次のように書いていたことを思い出しました。

「彼女はとんでもない『独裁者(の家族)』なのですが、現在もある程度の立場を保持しており、一族も要職についているのです。また、今回このように偶然写真をとることができたように、堂々と国民の前に顔を出すことができているのです。また、いきなりわけのわからない日本人に呼び止められて一緒に写真をとらせる余裕ぶりです・・・日本人である私でも知っているような『魔女』ぶりを発揮していた人がどうしてこの国ではこのような立場を保持し続けていられるのか?とても不思議でその理由をすかさずフィリピン人の友人に聞いてみました。そしたらその答えが、『フィリピン人は何でも許すことができる国民だ。良くも悪くも過去のことを振り返らないし、現在起こっていることもあまりその本質を考えることはしない。つまり、なるようにしかならないので、考えてもしょうがないことは考えない。だから、日本に対する感情も中国のようにはならない。』」

それともう一つ、今回の結果には副大統領候補の存在が大きいとも言われています。

それは、犯罪撲滅のためには犯罪容疑者の殺害もいとわない姿勢を示し、「フィリピンのトランプ」などと言われながら支持率90%以上を誇る現職大統領ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の長女サラ・ドゥテルテ氏の存在です。

実は、ドゥテルテ大統領は当初、娘のサラを大統領選挙に出馬させ、自らは副大統領選挙に立候補する方針でしたが、それが憲法違反であるという批判を浴びた結果、サラ・ドゥテルテ氏自らが大統領選に出馬する意思を一度は固めながらも、立候補を取りやめ、マルコス氏と連携して副大統領選挙に出馬し、フェルディナンド・マルコスJr.大統領・サラ・ドゥテルテ副大統領のコンビが誕生したというわけです。

フィリピンの選挙の仕組みは独特で、大統領と副大統領のどちらも選挙があるため、同じ政権内でそれぞれが対立することもありえます。

実際に、今回大統領選でマルコスJr.に敗れたレニー・ロブレド氏はドゥテルテ政権の副大統領でありながら、両者の当選後かなりの期間にわたって会おうとすらしなかったり、亡命先のハワイで死亡した故マルコス元大統領の遺体をフィリピンの英雄墓地に埋葬することを決定したドゥテルテ大統領に対し、フィリピン国民を侮辱する行為だとして批判したこともあります。

フィリピンという国は、「the country of forgiveness(許しの国)」であるとともに、「圧倒的に強いリーダーを求める国」であり、また「なるようにしかならないと考える国」なのだということのようです。